研究課題/領域番号 |
25620191
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研究種目 |
挑戦的萌芽研究
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研究機関 | 早稲田大学 |
研究代表者 |
黒田 一幸 早稲田大学, 理工学術院, 教授 (90130872)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | レアメタル回収 / メソポーラスシリカナノ粒子 / コロイド粒子 / コアシェル粒子 / 粒径制御 |
研究概要 |
レアメタルは高機能材料の製造に必須であるが、供給の国外依存性や資源自体の枯渇などの問題から、その安定供給には廃棄物からの分離・回収による循環が必要である。本研究課題は、廃棄物のように複数の金属種が含まれる溶液中から、複数の金属種を同時に分離・回収可能な手法を確立するものである。 複数金属の回収には、金属種に対する選択的吸着能を示す有機基を付与した水分散コロイド状メソポーラスシリカナノ粒子(CMS)を用いる。そこで、本年度はCMSへの有機官能基付与を試みた。さらに、CMSの粒径差を利用した密度勾配超遠心法(金属種を吸着したCMSの分離)に向けて、CMSの粒径分布の厳密な制御を目指した。 CMSへの有機官能基付与 : CMSは多量の界面活性剤存在下で、シリカ源を加水分解・重縮合させることで得られる。合成時のシリカ源として金属種に対する選択的吸着能を示す有機基を持つオルガノアルコキシシランのみを利用した結果、有機基を高密度に有するコロイダルオルガノシリカが得られた。さらに、その表面をメソポーラスシェルで被覆することで、高い分散安定性を持つ有機基含有CMSの合成に成功した。 CMSの粒径分布制御 : 粒子の粒径分布を均一に制御するためには、粒子形成過程における核発生期および核成長期の制御が重要である。合成溶液中でのシリカ源濃度の制御により、CMSの核発生期間を短縮することで、従来よりも格段に均一な粒径分布を有するCMSの合成に成功した。加水分解速度が遅く、核発生を生じにくいシリカ源を核成長に用いることで、CMSの自在な粒径制御を実現した。さらに、粒径分布を均一に制御したことにより、CMSの規則的配列体(コロイド結晶)の作製にも初めて成功した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
①CMSへの有機官能基付与 : 本年度は、分散安定性の高い有機官能基導入CMSの合成を目指して研究を進めた。その結果、高密度に有機官能基を導入したコロイダルオルガノシリカの合成を達成した。さらに、有機官能基を導入した粒子には分散安定性の低下が懸念されていたが、この点については、メソポーラスシェルとの複合化により解決した。そのため、本研究項目は、当初の計画通りに順調に進展していると言える。 ②CMSの粒径分布制御 : CMSの粒径分布を厳密に制御することは、CMSを密度勾配超遠心法に利用するために、極めて重要な課題である。そのため、この課題についてはH25年度からH26年度に渉り、長期間をかけて達成する予定であった。しかし、CMSの合成プロセスを詳細に解析・最適化することで、CMSの粒径分布制御法を本年度の内に確立することができた。得られたCMSの粒径分布の均一性は、本合成法から期待される結果の最高レベルに近く、本研究項目は当初の計画以上に進展していると言える。また、均一な粒径のCMSを作製する過程で、CMSが規則的に配列した結晶(コロイド結晶)が得られた。コロイド結晶の作製は、材料化学の観点から非常に価値のある成果であると言える。
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今後の研究の推進方策 |
本年度は、CMSへの有機官能基の付与および分散安定性の向上を達成し、さらにCMSの粒径分布の厳密制御に成功した。来年度はCMSをポリマーや金属イオンを含む溶液に分散させ、密度勾配超遠心法によるCMS分離条件の検討を行う。さらに、本年度得られた知見を基に、有機官能基を付与した状態でのCMSの粒径分布制御を行う。最終的に、有機官能基を導入したCMSを用いて、実際に複数のレアメタル金属種の同時分離を試みる。
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次年度の研究費の使用計画 |
サイズ制御を厳密に行うために、コロイド粒子の調製量を低減した。そのため試薬購入費用が当初予定より低減できた。 発表するに足る新規成果が予想より多く得られており、本年度の成果発表に要する費用が、当初見込みより増えるので、それに充当したい。
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