高双極子モーメントの有機物ドープにより液晶分子が配向制御され、π電子相互作用によりトンネルホッピング確率が増加し、導電率が向上することを実証した。ドーパントはやはり4デバイ以上の双極子モーメントを有するものが有効であったが、その分子構造との相関を整理するまでには至らなかった。現在、分子動力学計算ソフトを用いてのデータ整理を試みている。 Dark Injection法用パルス電源・電流測定系構築の鍵は、パルス電源部に使用する水銀リレーだが、製造中止となっているため、手持ちのNEC製高速水銀リレーを流用した。本研究終了間際に(株)沖田製作所が水銀リレーを製造していることを知り、MWG-104型を購入して試したが、問題なく使用することができた。差動アンプはAD8130やLMH6654等の高性能アンプやLMH6559バッファーに変更し、回路の最適化を行った。実際に動作確認を行ったところ、高速測定の肝は電流計測用のブリッジのバランスにあり、従来使用していたHA-5033-5バッファーやEL2142高速オペアンプでも改良版でもほとんど差がないことが分かった。100ns以下の時間域への改良は、電流計測部のブリッジバランスが支配的で、計測セル個々によって条件が変わるため、一般化した対応は不可能であると考えられる。ここでは、インダクタンス分をバランスさせるため、肺尖部の長さを極力同じにし、容量バランスにはラジオ用のポリバリコンを採用することでバランスをとることの精度と時間短縮を可能とした。 有機半導体への応用に関しては、Dark Injection法による計測では分子層の厚さが100nm程度の薄膜にする必要があり、10μm程度の厚さの液晶セルでは無理があった。いずれにしても、高誘電率な官能基、特にC=O基を有する材料はπ電子相互作用が大きく、漏れ電流増加に効果的であった。
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