研究課題/領域番号 |
25620193
|
研究種目 |
挑戦的萌芽研究
|
研究機関 | 千葉大学 |
研究代表者 |
小林 範久 千葉大学, 融合科学研究科(研究院), 教授 (50195799)
|
研究分担者 |
中村 一希 千葉大学, 融合科学研究科(研究院), 助教 (00554320)
|
研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2015-03-31
|
キーワード | エレクトロデポジション / 銀電着 / ナノ構造化学 / 多色発色 / 局在表面プラズモン共鳴 |
研究概要 |
エレクトロクロミズム(EC)は表示・調光素子応用が急速に実用化し始めており,大きな期待がもたれている.銀イオンも電気化学的に還元することで電極上に銀が析出し,電極表面の光学状態が変化することから一種のECといえる。本研究では,これまでの我々の銀電着系に関する研究の結果明らかとなった,その光学状態が電極上に析出した電着銀ナノ粒子の局在表面プラズモン吸収に起因することに着目し,電着銀粒子の粒径制御に基づくECの実現を目的とした。すなわち,電着をパルス電圧のステップ印加で行うことで電着銀の粒径を均一任意に制御,粒径に依存した電着銀ナノ粒子の局在表面プラズモン吸収帯の移動に基づく全く新奇なブラズモン吸収帯制御カラーEC素子の実現を目的とした。 1.銀電着用ケル電解質を二枚の透明電極で挟み込みEC素子を作成した。素子の発消色に伴う電流電圧応答から,核生成に関するパルス電圧V1=-4.0V,核成長に関するステップ電圧V2=-1.5Vを決定した。この素子にV1を20msec(t1),その後V2にステップして電圧を与えることで,透明から赤,青への可逆的な色変化が得られた。電子顕微鏡による電着銀ナノ粒子の観察から粒径分布を算出,定電圧法で作成したものと比較したところ,ステップ電圧法において粒径が小さく分布幅の非常に小さい銀ナノ粒子が得られることが明らかとなった。このV1,t1,V2を変えることで色,発色濃度は異なり,粒径や粒子数,粒度分布と相関を持つことが明らかとなった。また,色素の三原色の二色であるシアンとマゼンタの発色にも成功した。 2.次に銀電着系ゲル電解質を表面がフラットな透明電極と表面をITO粒子で修飾した透明電極で挟み込み,それぞれの電極に電圧印加方法を変えて銀を電着した。透明・赤・青・黒・鏡状態の五色を発現できるEC素子が再現良く得られ,また良好な繰返し特性を示した。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
当初目的としていた計画項目,1.多色発色状態発現条件の確立,2.発色状態と電着銀ナノ粒子粒径,粒径分布との相関の解明さらには多色発色機構の解明,3.複数の光学状態を可逆的に発現できる素子の構築,に関してすべてをクリアすることができ,今後の展開に関して新たな期待が持てる結果が得られた。また結果をAdvanced Material誌に発表し,研究内容のイラストがInside Cover Pictureとして採用された。さらには国内外からいくつかの招待講演を受けるなど,この分野の発展にまだ微力ではあるが寄与できていると考えられるため。
|
今後の研究の推進方策 |
平成26年度は,まず,発色状態として鏡状態,黒に加え,減法混色の二原色であるシアン,マゼンタが得られていることから,最後の一色であるイエローを実現し,単一素子としてミラー,黒,シアン,マゼンタ,イエローの発消色を実現できる新奇EC素子を実現する。次に,各発色状態の経時安定性向上ならびに発色濃度の任意制御を可能とする素子の実現を目指す。経時安定性の向上は電極表面上でいかにその粒径を保てるかに起因し,発色濃度の任意制御は均一な粒径の電着銀ナノ粒子の個数を電極上でいかにコントロールできるかに起因する。EC素子への電界印加条件を精査することで達成可能と考えらる。例えば,電着銀ナノ粒子は電圧供給を止めると徐々にゲル電解質中に溶解するが,電圧印加に伴うナノ粒子成長速度と無印加による溶解速度には差があるため,パルス電圧を適当なDuty比で与えることで発色状態の経時安定性を実現する。また,V1,t1,V2の精密制御も検討する。 前年度の結果も含め,得られたすべての結果を統合して実用性への期待度の高い将来的な新奇多色発色EC素子確立の基礎研究を行う。
|
次年度の研究費の使用計画 |
発色状態における色度,色彩を定量的に評価するため,分光測色系(コニカミノルタ)の購入を予定していたが,既存のマルチチャンネル分光光度計に積分球(新規購入)を設置することで,同等以上の解析が可能であることがわかり,積分球のみの購入で対応できた。そのためその差額分約50万円と補正用試料等の購入が浮いたため差額が生じた。 本年度は銀に加え,他の貴金属系ならびにその混合系での検討も計画しており,試料代としてより出費がかさむものと思われる。また,印加電圧の精密制御やパルス電圧印加のためのスイッチ等を新たに購入する必要があるため,電気化学系のセットアップに関して費用がかさむ予定である。
|