研究実績の概要 |
エレクトロクロミズム(EC)は表示・調光素子応用が急速に実用化し始めており,その展開に大きな期待がもたれている。銀イオンも電気化学的に還元することで電極上に銀が析出し,電極表面の光学状態が変化することから一種のECといえる。本研究では,銀電着系に関し,その光学状態が電極上に析出した電着銀ナノ粒子の局在表面プラズモン吸収に起因することに着目した。すなわち,電着をパルス電圧のステップ印加で行うことで電着銀の粒径を均一任意に制御,粒径に依存した電着銀ナノ粒子の局在表面プラズモン吸収帯の移動に基づく全く新奇なブラズモン吸収帯制御カラーEC素子の実現を目的とした。 1.銀電着を,ITO粒子で表面修飾した荒い電極表面上で行うと黒色が得られる。ITO粒子修飾状態(膜厚)と光学状態の相関を明らかにし多色発色の可能性を探るためため,ITO粒子修飾量を変えた電極を用い解析を行った。ITO粒子で未修飾な部分(平滑ITO表面)では鏡状態が発現し,ITO粒子が1層でも平滑ITO電極を覆うことで黒が発現させれることが明らかとなった。銀粒子形状が光学状態をすることが明らかとなった。 2.平滑ITO電極からなる銀電着EC素子に,核生成パルス電圧V1をt1秒,核成長ステップ電圧V2をt2秒印加することで,素子の色調を変化できる。例えばV1=-4V, t1=20msec, V2=-1.5Vを用いることでt2増加に伴い素子の色は透明からマゼンタ,シアンへ変化した。各々のパラメータと光学状態,電着銀粒子形状の相関を解析した結果,V1, t1は析出粒子数の制御に有効であり色濃度に影響を与えること,V2は粒子成長速度に,さらにt2は最終的な粒子径に大きな影響を与えることが示唆された。この組合せによりマゼンターシアン間の階調も含めた複合色を銀電着だけで発現できることが明らかとなった。
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