研究課題/領域番号 |
25630003
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研究種目 |
挑戦的萌芽研究
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
青柳 吉輝 東北大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (70433737)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 高分子材料 / 球晶 / ポリプロピレン / 階層的モデリング / 力学特性 |
研究概要 |
複雑な結晶性高分子材料の階層構造を表現するために,平成25年度は分子鎖のすべりを金属の結晶塑性論におけるすべりに対応させることによって,結晶質部分の塑性変形を表現する分子鎖塑性モデルを構築した.高分子材料の球晶は,結晶質部分と非晶質部分が積層上になったラメラ構造が基礎となり,そのラメラ構造がねじれながら放射状に成長していくことによって形成されている.このような複雑な構造を,結晶質部分と非晶質部分で構成される材料として表現することは可能であるが,材料中に無数に存在する球晶すべてを表現するのは計算機の容量的に困難である.そこで本研究では,ラメラ部分を結晶質部分と非晶質部分の複合材料としてモデル化し,混合則を用いてそれらの構成関係を連続体の一点に集約することによって,計算の効率化を図った.非晶質部分に関しては非晶性高分子材料に対して提案された非アフィン分子鎖網目理論を用いた.また,ポリプロピレンの結晶・非晶構造が材料の応力ひずみ応答に与える影響を評価するため,成形条件によって球晶サイズを変化させた材料の結晶組織観察,結晶化度および応力ひずみ応答を測定した.結晶相および非晶相それぞれの変形挙動を表現可能な高分子塑性モデルに,実験で得られた結晶化度を反映させた数値解析を行い,材料の巨視的な力学挙動について評価した.材料中の球晶サイズが増大するに伴い,ポリプロピレンの弾性率および降伏応力が増加した.実験で得られた結晶化度を反映させた解析においては降伏応力の上昇のみが見られた.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
分子動力学計算に基づく分子鎖の微視的変形挙動に関する結果を,本モデルに反映するには至らなかったが,平成26年度に行う予定であった実験結果と数値解析結果の比較・検討を本年度に行うことができた.
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今後の研究の推進方策 |
結晶質部分がすべり変形する際の抵抗となる値は変形とともに変化していくと考えられる.このことを確認するために,分子動力学法を用いた数値シミュレーションを行い,分子鎖がすべりを生じる際のメカニズムおよび変形抵抗値について検討する.また,非晶質部分に関してはランダムコイル状の分子鎖が配向や引き抜きといった現象を起こしながら塑性変形が進行する現象を,分子動力学法に基づく数値解析によってデータベース化する.ポリプロピレン試験片に対して引張り試験を行い,偏光顕微鏡によって変形前後の球晶の様子を観察し,本モデルを用いた数値解析結果と詳細に比較・検討する.球晶を材料内に配置し,その間を非晶性質で埋め尽くすことによって,結晶性高分子材料のモデルを作成する.本モデルを用いて力学挙動およびき裂進展シミュレーションを行い,結晶化度,結晶方位,球晶サイズがこれらの事象に与える影響について検討する.
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次年度の研究費の使用計画 |
計算機の能力を最も左右するCPUの性能が平成25年度に発売されたものは低かったため,平成26年度に購入予定であった実験装置を平成25年度に購入し,平成25年度に購入予定であった計算機を平成26年度に購入することにしたため. 平成26年度は,Xeon E5-4600 v2シリーズ搭載のワークステーションを購入する予定である.
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