研究課題/領域番号 |
25630005
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研究種目 |
挑戦的萌芽研究
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研究機関 | 山形大学 |
研究代表者 |
古川 英光 山形大学, 理工学研究科, 教授 (50282827)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 表面・界面物性 / 高分子構造・物性 / 機械材料・材料力学 / ゲル / 光散乱 |
研究概要 |
赤血球はその直径の半分以下の内径しかない細い毛細血管内を詰まることなく循環し続ける驚異的な輸送現象を実現している。この現象を解明するには血液(流体)の挙動だけに注目するのでなく、ソフトな血管(ゲル管壁)の挙動にも同時に網羅的に注目することがソフト&ウェットな流路における輸送現象を解明する上で非常に重要である。申請者の得意とする光散乱の手法を駆使することにより、流体の濃度、粘度、流速、ゲル管壁の弾性率、拡散係数の全てを解析可能である。本研究では、「ナノ・ミクロンスケールでゲルと流体の界面の動的現象を直接in-situ観察する」ことを目的として、申請者独自の走査型顕微光散乱法を活用した世界初の観察装置を開発し、血管というソフト&ウェットな流路における効率的な輸送のメカニズムを解明する。平成25年度は下記を実施した。 【テーマ1. 走査型顕微光散乱によるソフト&ウェット流路in-situ観察システムの開発】 1. ソフト&ウェット流路の設計と作製 2. 流路測定用の光学系の設計と構築 3. 流路ゲルの調製 4. ソフト&ウェット流路のin-situ観察‐疑似血管中の疑似赤血球輸送の直接観察
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
上記、テーマ1.に関して、下記の事項を達成した。 1. ソフト&ウェット流路の設計と作製:血管を想定した流路を設定するため、腕の血管に相当する6mmの内径をもつソフト&ウェットな管状の造形物を高強度ゲルで作製した。 2. 流路測定用の光学系の設計と構築:前項1.の流路の試作と並行して光学系の設計と構築行った。また、これに合わせて、流路測定用の新規の走査型顕微光散乱装置を組み立てた。 3. 流路ゲルの調製:流路中の流量が安定し、かつin-situ観察に適した管状ゲル試料を製作した。 4. ソフト&ウェット流路のin-situ観察:上記の1.~3.がおよそ上手く行ったところで、流路内のin-situ観察を試みる予定であったが、3.までの進行に時間がかかったために、今後継続的に進める。 この間雑誌論文(査読付論文)2件、招待講演2件、国際学会発表4件、国内学会発表4件を行い、成果を外部に公表した。
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今後の研究の推進方策 |
【テーマ2. 流路中の流速と管壁内の網目構造の同時測定】 5., 6. 流路ゲルの内部構造解析、流路全体のイメージング:前年度に引き続き、流体の内部構造だけでなく、ゲル中の内部構造をも解析できるように装置を改良する。試料中の多数の場所における物理量を測定し、試料全体の性質を正しく反映したアンサンブル平均の物理量を決定する機構をシステムに組み込む。これが上手く行き始めたら、流体とゲルの界面の両側で、流体内部の動的構造とゲル内部の動的構造をシームレスに観測できるようにシステムを改良する。 7. ゲル壁面近傍の直接観察‐壁面の位置変化への追従:ゲルと流体の界面においては、流速や流体の物性を変えることによって法線応力が変化するので、in-situ観察しようとすると、ゲル表面の凹凸や弾性率の場所による違いなどのさまざまな観察条件によって界面の位置が変化することになる。観察条件を広く変えても界面の位置変化に追従し、界面近傍の直接観察できる方法を検討する。 【テーマ3. 流体中の高分子がソフト&ウェット流路に与える効果】 8., 9. 剛直性を変えた高分子添加物の効果、高分子デンドリマー添加の効果:流体に剛直性を変えた高分子を添加することで、ソフト&ウェット流路中の流動現象がどのように変化するかを調べる。また、最近では制御された分岐構造をもつ高分子を精密に合成することができるようになっており、新しい添加物としての可能性を検討する。
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