研究課題/領域番号 |
25630006
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研究種目 |
挑戦的萌芽研究
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
田中 展 東京大学, 工学(系)研究科(研究院), 助教 (70550143)
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研究分担者 |
泉 聡志 東京大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (30322069)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 半導体 / 微細パターン材 / 真性応力 / 板理論 / 座屈 |
研究概要 |
近年,半導体デバイスの微細化に伴い,基板-誘電材-マスク材間に生じる真性応力(内部応力)の影響が無視できなくなり,この真性応力に起因する微細パターン材の座屈不良が製造プロセス工程における歩留り低下の原因となっている.本研究では,「真性応力に起因する微細パターン材の弾性不安定挙動の数理モデルを構築し,半導体デバイス製造における設計指針を与えること」,さらに,「構築したモデルを展開して,より一般的な微細柔軟構造の新たな形態制御手法を提案すること」のこれら2つを主目的として,産業応用への貢献から応用力学に基づく新たな展開を視野に入れた萌芽的研究に取り組む. 上記の目的に即して,平成25年度は主に板理論と有限要素法(FEM)を用いた半導体微細パターン材の数理モデルの構築を行った.はじめに,大変形板理論(Foppl-von Karman方程式)を用いて誘電層およびマスク層を対象にした無次元化2層モデルを定式化し,ドライエッチングプロセスを考慮した面外うねり座屈の座屈評価法を構築した.そして,実験値と本手法で得られた理論値を比較することで,多様なパターン形状において本座屈評価法が有効であることを示した.次に,2層モデルが薄板近似をし,基板を剛体と仮定していることを考慮し,FEMによるフルモデル解析を実施した.これより,FEMにより得られた座屈応力が2層モデルより20%低下することを確認した.以上より,2層モデルをベースとして板厚および基板のヤング率を考慮した微細パターン材の設計指針を確立した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究計画調書に記述したとおり,平成25年度は微細パターン材の面外うねり座屈を表現する数理モデルの構築に注力し,実験値とよく一致する座屈評価法を確立した.本研究で得られた知見は論文として整理し,英文誌に現在投稿中である.また並行して,平成26年度に計画している微細柔軟構造の新たな形態制御手法を確立するため,多層ゲルの膨潤座屈を観察実験する研究環境を構築した.
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今後の研究の推進方策 |
平成26年度は,構築した2層モデルをベースに微細柔軟構造の新たな形態制御手法の確立を目指す.本モデルは線形座屈解析に基づいているため座屈応力評価には優れているが,座屈後形状を予測することは困難である.そこで,数理モデルおよびFEMを利用した座屈後解析の構築に取り組む予定である.また,座屈の主因子である真性応力を高精度に予測するため,a-SiのGa/O2エッチング中の初期酸化時の応力シミュレーション手法を分子動力学法をベースにして開発する.また本研究では,数値解析と並行して膨潤ゲルによる観察実験も実施する.前年度にヤング率および膨潤率を調整できるゲル合成およびその膨潤座屈実験に取り組み,低ヤング率のゲル構造はその自重で容易に変形するため,数理モデルの境界条件を表現することに課題が残った.そこで平成26年度は,生体力学実験などを模試しながら柔軟微細構造の境界条件を適切に表現できる支持部の開発からはじめる予定である.
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次年度の研究費の使用計画 |
平成25年度の使用計画では,有限要素法ソフトウェアや計算サーバなどの数値解析環境の補填とゲル構造の膨潤実験のための実験環境に対する設備投資に当該助成金を配当する予定であったが,数値解析は小規模の計算でも十分であったため実験設備の方に重点的に割り当てる結果となり,数値解析用の予算は次年度に繰り越す形となった. 平成26年度では,形態制御の研究目的に即して微細パターン材モデルの大規模解析およびa-Si構造に生じる真性応力の分子動力学解析を行うために,前年度から繰り越した分と併せた助成金予算を割り当てて計算サーバを購入する予定である.それ以外については,研究計画調書に記述した内容の通り,ゲル構造の作製など実験補助消耗品費,膨潤試験装置の開発などの実験整備費に割り当てる予定である.また,本研究成果を発表するために,学会参加費/旅費および論文投稿費などを計上している.
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