研究課題/領域番号 |
25630007
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研究種目 |
挑戦的萌芽研究
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研究機関 | 東京工業大学 |
研究代表者 |
大西 有希 東京工業大学, 情報理工学(系)研究科, 助教 (20543747)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 平滑化有限要素法 / 大変形 / メッシュリゾーニング / ロッキングフリー |
研究概要 |
平滑化有限要素法(Smoothed Finite Element Method: S-FEM)の新しい定式化を提案し,大変形問題におけるメッシュリゾーニングも行うことが出来るシミュレータを開発した. 提案した新しい定式化は,古典的な弾性体しか扱うことの出来なかった既存のselective S-FEMの定式化を拡張することにより任意の非線形材料モデルを扱うことが出来る様に改良されている.開発したシミュレータは,四面体1次要素あるいは三角形1次要素を用いた解析においてもロッキングと呼ばれる精度低下を引き起こさない.これは既存の標準的な定式化を用いた有限要素解析ソフトには無い優れた特徴である.メッシュリゾーニングにおいても,マッピング処理後の不釣合を最小限に留めるべく,提案したselective S-FEMの定式化に即したリゾーニング手順を提案し組み込んだ. 様々な検証解析を実施し,最も低級な要素を用いた提案手法による解と,高級な要素を用いた既存の有限要素解析ソフトの解が良好な精度で一致することを確認した.材料モデルは弾性体だけでなく超弾性体や弾塑性体も組み込み,提案手法が任意の非線形材料モデルに適用できかつ精度も良好であることを具体的な解析を通じて示した.メッシュリゾーニングを用いて歪みが数千%にも及ぶ解析を実施し,固定メッシュでは到底解が得られない様な問題を提案手法で解くことが出来ることも示した. 厳しい大変形を伴う解析ではメッシュリゾーニングが必須であり,その際は低級な要素でリメッシングせざるを得ないことが知られている.従って,提案手法により高精度な解が得られることは今後実用に耐えうる超大変形解析を実現する上で重要な成果である.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
年度当初,まず陰的増分形釣合方程式に基づく標準的な有限要素解析シミュレータを開発した.しかしながら,弾性体/超弾性体のメッシュリゾーニングにおいて陰的増分形釣合方程式を用いると,解析の安定性が飛躍的に向上する反面,除荷した際のスプリングバックにおいて初期形状に完全には戻らない定式化であることが明らかとなった.大きな塑性変形を伴う解析であればこの点は問題にならないが,主に弾性挙動を示すアプリケーションに注目する場合には大きな精度低下を引き起こす.そこで,定式化において採用する釣合方程式を通常の陰的釣合方程式に切り替える変更を余儀なくされた. その他の計画項目(非線形材料モデルの組み込み,新しい平滑化有限要素法の提案と開発,既存手法との比較による検証解析の実施)については計画通り進展しており,従って総合的には「おおむね順調」であると判断した.
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今後の研究の推進方策 |
平成26年計画では,接触解析機能の実現とゴム材料の大変形実験による検証を目標とする.研究課題申請時の計画ではゴム材料ではなくレンズプレス成形を検証対象としていたが,平成25年の研究成果にゴム材料メーカーが興味を示した為,検証対象を変更する. 接触解析機能の実現ではペナルティー法による実装を行う.節点変位以外の未知数を必要としないというS-FEMの大きな特徴を損なわないためには,Lagrange未定乗数法等よりもペナルティー法の方が適当であると考えられる. ゴム材料の大変形実験による検証では,材料特性データの取得,超弾性体モデルパラメーターの抽出,検証実験の計画と実施,開発するシミュレータの解との比較検討を順に実施する.さらに比較検討結果をフィードバックしてシミュレータの改良につなげる.
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