研究課題/領域番号 |
25630008
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研究種目 |
挑戦的萌芽研究
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研究機関 | 名古屋工業大学 |
研究代表者 |
神谷 庄司 名古屋工業大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (00204628)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | シリコン / 水素 / 疲労試験 |
研究概要 |
本研究は水素によるシリコンの破壊・疲労挙動の変化を世界に先駆けて確認することを目的とする。研究計画初年度の本年は、水素環境下におけるシリコンの基本的な強度特性を把握するため、ガス雰囲気下で疲労試験可能な環境チャンバの構築および水素環境下における疲労寿命データの取得を主眼に置いて実施した。 防爆モータとスライダクランク機構を利用した曲げ疲労試験機を開発し、これを水素・酸素センサを組み込んで製作した環境チャンバ内に搭載した。またシリコンの疲労破壊には湿潤環境が密接に関与することを受けて、チャンバ内の湿度を高精度にモニタリング可能なTESTO社製湿度センサを選定・購入し、環境チャンバに組み込んだ。 製作した環境中疲労試験装置を用いて、実験室大気中(相対湿度35-40% )、水素中(相対湿度5% )および窒素中(相対湿度5% )の3種類の環境下で、単結晶シリコンの曲げ疲労試験(応力比=-1)を実施した。窒素中で試験片は疲労破壊せず、一方で水素中では大気中とほぼ同程度の回数で疲労破壊することを世界に先駆けて見出した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の計画通り、実験装置として疲労試験機と環境チャンバを開発、種々の環境下における強度・疲労寿命データの取得を達成した。さらに水素がシリコンの疲労破壊に深く関与することを実験的に証明した。
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今後の研究の推進方策 |
最終年度は、シリコン材料中の水素の固溶状態の評価と電子的手法を用いた損傷蓄積の観察を行い、水素の存在下における欠陥の挙動解明を行う。またシリコンの疲労には圧縮応力の作用下における欠陥の蓄積が重要な役割を担うと考えらており、この知見と水素の存在による疲労加速との相乗効果の検証を視野に入れた実験を実施する。
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次年度の研究費の使用計画 |
水素環境中のシリコンの疲労特性の解明には、水素が影響するシリコン結晶のすべりに関して、複数存在するすべり系に作用するせん断応力と圧縮/引張応力を系統的に変化させた疲労試験が必要であることが、新たに判明した。この知見をもとに最も効果的な実験を設定するためには、試験片の応力場における各結晶面上の応力成分を詳細に解析せねばならず、計画当初には予期しなかった計算が必要となった。この解析が終了して一定の知見が得られるまで実験を中断せざるを得ないため、初年度に必要な経費を最小限に抑え、新たに結晶方位を考慮して次年度に行う疲労試験と結晶欠陥解析の実施に必要な経費を、基金として計上した。 異なる面方位のシリコンウエハの購入と実験用冶具の作製、薬品・ガス等の実験消耗品の費用、および名古屋大学の超高圧電子顕微鏡を用いた欠陥解析の費用として使用する。
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