本研究では、シリコンの結晶すべり変形が水素により促進され、繰返し負荷により転位が集積して疲労破壊に至る事実を、世界に先駆けて直接観察することに成功した。同じレベルの垂直応力に加えて異なるレベルの剪断応力を結晶すべり面に負荷した実験を行った結果、剪断応力が大きい方が疲労寿命が短くなることを確認した。また、疲労破壊後の破面を走査電子顕微鏡により観察した結果、金属材料に見られるストライエーションパターンに類似した模様が見出された。さらに、透過電子顕微鏡により破壊起点近傍に集積した転位群が観察されるに及んで、これまで通説となっていた表面酸化膜腐食起因の仮説を否定するに十分な新しい知見が得られた。
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