強誘電(圧電)材料は、ナノ機械システム(NEMS)や高密度記録媒体など次世代科学技術の基幹を成す最重要材料である。通常、PbTiO3やBaTiO3などの強誘電体は磁性を示さないことがよく知られているが、研究代表者は、存在し得ないはずの「磁性」がナノスケールの強誘電材料中に現れることを見出した。本研究では、ナノ強誘電体の様々な幾何形状に依存して現れる特異な磁気特性とその発現機構を解明することを目的とする。さらに、負荷ひずみに対する発現磁気特性の連動作用(マルチフィジックス原理)を究明することを目指す 。
平成26年度は、まず、(1)開発した交換相互作用解析プログラムを計算装置に実装・調整し、系の交換作用を解析するシステムを構築した。(2)構築したシステムを用いて、ナノ強誘電体内に発現した磁性の交換作用パラメータを解析・評価した。(3)系の電子状態と交換作用を評価し、磁性発現のメカニズムについて検討した。磁性は、内部欠陥が表面などのナノ形状と強く相互作用することで、欠陥特有の電子状態が歪み、状態がスプリットすることで発現することを明らかにした。(4)ナノ強誘電体に対して負荷解析を実施し、負荷と連動する発現磁気特性の変化(マルチフィジックス特性)を評価した。その結果、発現する磁気特性は、負荷に連動して強磁性相、反強磁性相、非磁性相と多様な磁気位相変化を示すことが明らかになった。(5)以上の結果より、材料のナノ形状ならびに欠陥を工学的に利用する(Defect Engineering)し、さらにひずみを制御することで(Strain Engineering)、磁気の発現ならびにその磁気移送を制御・設計することができることを明らかにした。
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