研究課題/領域番号 |
25630023
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研究種目 |
挑戦的萌芽研究
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研究機関 | 金沢大学 |
研究代表者 |
細川 晃 金沢大学, 機械工学系, 教授 (40199493)
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研究分担者 |
古本 達明 金沢大学, 機械工学系, 准教授 (60432134)
小谷野 智広 金沢大学, 機械工学系, 助教 (20707591)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | CFRP / エンドミル加工 / 強ねじれエンドミル / 傾斜切削法 / デラミネーション / ガスセンサ / 毛羽立ち / DLCコーティング |
研究概要 |
本研究は,CFRP(炭素繊維強化プラスチック)の高能率・高品位加工を実現することを目的としている.当初の研究計画(1. 強ねじれ角を有するエンドミルによる傾斜切削法;2. 加工中に樹脂から発生する微量の気体を検知するガスセンシング法)に関する平成25年度の研究実績は以下の通りである. 1-(1). 傾斜切削法のための基礎実験:ねじれ角30degと強ねじれ角60degのDLC-コーティングエンドミルを用いてCFRPの側面切削加工を実施した.その結果,強ねじれエンドミルを用いた場合,いわば刃先角が小さな鋭利な切れ刃による傾斜切削になるため,炭素繊維のはがれや樹脂の剥離のない滑らかな加工面が得られるとともに,切れ刃の摩耗も小さいことがわかった.しかしながら, CFRP加工面に作用する切削抵抗合力が試料を押し上げる方向に作用するため,試料上端面に顕著な毛羽立ちが発生することが明らかになった. 1-(2). 強ねじれエンドミルによる傾斜切削実験:1-(1)の結果を踏まえ,切削抵抗の作用方向に試料を傾け,試料に沿って送りを与える“傾斜切削法”を提案し,良好な仕上げ面を維持したまま毛羽立ちのない加工面の創成に成功した.なお,炭素繊維の剥がれ,毛羽立ち,層間剥離等の加工面損傷がCFRPの引張り強度に及ぼす影響については,現在実施途中である. 2. 樹脂から発生するガスの検知実験:加工熱によって発生するガスの検知についは,推測される発生ガスCO, CO2, NOxを特定したガスセンサではガスが微量なため成功しなかった.そこで,より敏感な「においセンサ」を導入し,加工時におけるインプロセス検知に成功した.本手法の目的は樹脂の熱変質を加工中に検知することであり,当初の目的は達せられたと考えている.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の研究計画(1. 強ねじれ角を有するエンドミルによる傾斜切削法;2. 加工中に樹脂から発生する微量の気体を検知するガスセンシング法)に関する研究実績と達成度は以下の通りであり,おおむね順調と判断した. 1-(1). 傾斜切削法のための基礎実験:まず,●ねじれ角と加工条件が切削抵抗の大きさ・方向に及ぼす影響については,ねじれ角を大きくすることで切削抵抗が低下し,炭素繊維の配向角に依らず良好な切断性を有することを明らかにしている.また,●切削抵抗の作用方向に試料を傾ける“傾斜切削法”を提案し,その有効性を明らかにするとともに,●高速・低送りで切削合力角,すなわち傾斜切削における傾斜角を小さくできることを示し,本手法の実用性を明確にしている. 1-(2). 強ねじれエンドミルによる傾斜切削実験:まず,●加工条件が炭素繊維の剥がれ,毛羽立ち,層間剥離に及ぼす影響については,傾斜角が小さい状態でより高品位の加工面が得られることを示している.また,●傾斜切削では,ダウンカットで毛羽立ち逆に増加することを明らかにし,アップカットの必要性を示している.また,●加工面損傷がCFRPの強度に及ぼす影響については,現在引張り試験を実施して検証している段階である. 2. 樹脂から発生するガスの検知実験:●加工熱によって発生するガスの検知については,樹脂の熱変質によって発生する「におい」の検知に成功している.切削温度が樹脂の分解温度より低いと思われる加工条件ではセンサが反応しないことを確認しており,臨界切削条件下での加工を可能にするものである.一方,●樹脂の変質形態とにおい成分との関係については,現在検討中である.なお,熱変質後の樹脂の形態は炉内での加熱実験をしておおよそ把握できている.
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今後の研究の推進方策 |
熱硬化性CFRPに加え,熱可塑性CFRTPの高能率・高品位加工の実現をめざす.平成26年度の研究計画は以下の通りである. 1. 加工面損傷形態とCFRPの強度の関係:継続して,仕上げ面性状がCFRP試料の引張り・曲げ強度に及ぼす影響を明らかにする.特に,●傾斜切削法で得られる高品位加工面ではCFRP材料の強度低下(加工面内部における繊維のはがれや破損等)がないことを明確にする. 2. 工具の耐摩耗性の改善:これまでのDLCコーティング工具では,現在一般に使用されているダイヤモンド工具に比べ耐摩耗性が十分でないことがわかっている.そこで,より硬度が高い水素フリーテトラヘドラルDLCコーティング工具による高品位加工を試みる.なお,コーティング装置は【基盤研究(B)H24-H26:ホロカソード放電型スパッタ装置によるフリーカーボン含有高潤滑コーティング膜の創成】にて導入済である. 3. ガスセンシング法を用いた傾斜切削法の有効性の検討:まずは,ガス(におい)が発生しない加工条件では熱硬化性樹脂の熱変質が生じないことを確認した上で,ガスの発生の有無を根拠とした臨界切削条件を提案し,その有効性を実証する.その後,インプロセスガスセンシングによるCFRPの高能率・高品位加工が可能であることを実証する. 4. 熱可塑性CFRTPの高品位加工:自動車分野で期待されている熱可塑性CFRTPのエンドミル加工を行う.現在使用しているDLCコーティング工具はカーボン系であり,熱可塑性樹脂との親和性(ぬれ性)は高いと考えられ,切削温度によっては切りくずの凝着の問題が生じることが考えられる.したがって,樹脂の種類に適した工具材種(コーティング膜)を開発も行う.
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