本研究では、研究代表者が独自開発してきた常圧近傍・低温の高密度水素プラズマを用い、その特異的な反応場を巧に利用して木質バイオマス原料から単一炭化水素ガスを遊離し、高純度ダイヤモンド薄膜を合成するプロセスを確立することにある。 そこで本研究では、まず天然由来の炭素原料である白炭の気体(水蒸気)の吸・脱着特性を明らかにするため、その気体の吸着特性を調べた。気体吸着による木炭重量の増加は、空気曝露時間の平方根に比例する関係が得られ、木炭内部へのガスの拡散挙動に支配されている事が分かった。また、用いたウバメガシ白炭は、何れも乾燥重量に対して平均7%程度の質量の水を安定して吸着し、この吸着水分は、150℃程度から顕著な脱離が見られ、800℃での脱ガス操作により枯渇することが明らかとなり、脱ガス処理後の白炭を用いれば、成膜における水の影響はほぼ無視し得ることが分かった。次に、高密度水素プラズマに曝露した際、白炭に5%程度の濃度で含有される土壌由来のSi、Al、Ca、Mg等の不純物が、どの様な挙動を示すかを調べた。木炭中に含まれる前記の不純物は、水素プラズマにより曝露された後には、木炭表面に直径がサブミクロンサイズの繊維状凝集体として大部分が存在している事が分かった。このことから、本成膜法には、原料中に含有されるこれら不純物に対して精製作用を有している事が確認された。また、工業用炭素材料とのエッチング特性の比較では、木炭が最もエッチングされにくい材料であること、得られるガスは何れもメタンが主体で有ること、エッチング速度の温度依存性はほぼ同等であることが明らかとなった。また白炭原料が設置された電極においても、マイクロ波プラズマを容易・安定に生成できることが分かった。 木炭原料を用い室温に保持されたSi基板上へは、SiC薄膜およびグラファイト薄膜の形成が可能である事が明らかとなった。
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