研究課題/領域番号 |
25630032
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研究種目 |
挑戦的萌芽研究
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
三木 寛之 東北大学, 国際高等研究教育機構, 准教授 (80325943)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 超低摩擦遷移 / 研磨ダイヤモンド / 流体潤滑 / 希薄気体潤滑モデル / テクスチャ |
研究概要 |
表面に微小な構造(テクスチャ)を持つ平滑な微結晶ダイヤモンド膜を用いて、複雑な機械機構を用いずに、ある振動状態では摩擦係数がほとんど零となるフローティング原理を開発する。本研究で提案する平滑な微結晶ダイヤモンドでは、摺動速度に依存した境界潤滑→混合潤滑→流体潤滑へと連続的に推移する無潤滑摩擦現象が発現するが、回転や直線の摺動ではなく高速あるいは微小振動と組み合わせることによって局所的に摩擦低減効果を生み出す機構の可能性を検証する。 平成25年度はボールに微小振動を与えることができる摩擦振動試験を用いて、研磨ダイヤモンドの常温大気雰囲気における振動摩擦係数の定量的評価を行った。ここでは、膜表面の1次元的形状(凸凹)と2次元形状(表面テクスチャ構造)と摩擦係数との関係を評価した。また、光学顕微鏡による組織観察、原子間力顕微鏡による微細形状の直接観察のミクロスケール評価とマクロスケールの表面粗さ評価により、膜のうねりや凸凹による形状パラメータと摩擦挙動特性の関係性を示した。さらに、規則的な表面形状では摩擦係数が安定的に低いことが一般に知られていることから、ダイヤモンド膜の凹みの分散度(研磨面積率)を代表的な膜表面の組織パラメータとして抽出し、規則度を非常に小さくした不規則形状制御パラメータが摺動に与える影響を明らかにした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成25年度は、摩擦振動試験機により研磨ダイヤモンドの常温大気雰囲気における振動摩擦挙動について、膜表面の1次元的形状(凸凹)と2次元形状(表面テクスチャ構造)と摩擦係数との関係を示すことができた。ここでは、ミクロスケール評価とマクロスケール評価により、膜のうねりや凸凹による形状パラメータが摩擦特性に与える影響を明らかにし、不規則なダイヤモンド膜の凹みの分散度(研磨面積率)を代表的な膜表面の組織パラメータとして抽出することができた。 従って、平成25年度に遂行された研究によって、研磨ダイヤモンドにおける摺動速度による摩擦低減効果に及ぼす振動の影響を明らかにし、抽出した潤滑の状態遷移を誘導するパラメータ(振動数や振幅など)を示すことができたことから、上記達成度と評価した。
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今後の研究の推進方策 |
摩擦振動試験により、研磨状態(表面微細形状)の異なるダイヤモンド膜と金属との間の摩擦低減効果について評価する。この実験により、浮上への寄与が大きい形状因子を明らかにし、摩擦低減効果の制御性を検証する。また、研磨ダイヤモンドの常温大気雰囲気における振動+摺動状態の定量的評価を行い、研磨ダイヤモンドにおける摺動速度による摩擦低減効果に及ぼす振動の影響を明らかにする。ここでは潤滑の状態遷移を誘導するパラメータ(振動数や振幅など)を抽出し、定性的な摩擦低減(浮上)モデルを構築する。
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次年度の研究費の使用計画 |
研究の実施計画に変更はなかったが、作成を計画していた摩擦振動試験機を海外研究機関にて借用の目処が立ったため、当初予算に計上した物品費が予定より少なくなった。その他経費については分析に係る装置が所内で実施可能となったことによるものである。本事業においては研究計画に変更の必要がないため、当該研究費は平成26年度実施の研究費として研究計画を策定している。 平成26年度は海外研究機関における摩擦振動試験を2回予定しており、予算計画変更分をその渡航費に充当する。平成26年度の具体的な支出予定費目は以下の通りである。物品費(成膜用基板、原料ガス(メタン,アルゴン等)、走査電子顕微鏡用消耗品、表面研磨用消耗品、断面試料作製用消耗品、タングステンワイヤー、放電加工ワイヤー)、旅費(成果発表、調査研究、研究打合せ、資料収集)、人件費・謝金(論文校閲)、その他(会議費、通信費、論文投稿料、学会登録料、分析委託費)
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