研究課題/領域番号 |
25630035
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研究種目 |
挑戦的萌芽研究
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
松本 敏郎 名古屋大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (10209645)
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研究分担者 |
山田 崇恭 京都大学, 工学(系)研究科(研究院), 助教 (30598222)
飯盛 浩司 名古屋大学, 工学(系)研究科(研究院), 助教 (50638773)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 設計工学 / エナジーハーベスト |
研究概要 |
本研究課題では、アンテナの形状を設計するために形状変更に伴う3次元電磁場解析と固有振動数解析を多数回繰り返す必要があり、高速な電磁場解析法が必要となる。高速な電磁場解析を行う境界要素法としてHelmholtz方程式の基本解の多重極展開に基づく方法があるが、連立方程式を反復法で解く必要上、境界積分方程式の積分核の特異性を下げる定式化がなされており、係数行列をそのまま扱う場合にはマトリックスが悪条件となる難点があった。一方、近年大規模な連立方程式を少ない記憶容量と計算量で解く方法が提案されており、電磁場の境界要素法に用いれば、積分核の特異性を下げない通常の境界要素法の定式化が可能となるだけでなく、反復法の収束性の問題も一気に解決した大規模高速解法が実現すると考えられる。 境界要素法による高速な電磁場解析法を開発する考え方として,従来の電場,磁場を直接未知数として用いて解く方法があり,そのための連立方程式の直接解法を試みたが,まだ十分な計算効率が得られなかった。この点は引き続き本年度も検討する必要がある。電場・磁場の代わりにベクトルポテンシャルとスカラーポテンシャルを用いる方法は,ヘルムホルツ方程式として問題を扱うことができるので,従来の高速多重極法で高速な計算が可能と考えられる。 次に,アンテナ形状設計のための基本アルゴリズムを確立するために,電場強度や磁場強度を最大化するトポロジー最適化を,レベルセット関数による形状表現と境界要素法を用いた方法により行った。この方法では,電磁場中に誘電体や導体が出現して,場のトポロジーが変化する場合のトポロジー導関数が必要となるため,それを理論的に導出した。さらに2次元及び3次元の問題に対して基本ソフトウェアを開発して有効性を示した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
本研究では,最終的に電磁場のトポロジー最適化を行う計算アルゴリズム,ソフトウェアの開発が必要となるが,平成25年度に2次元及び3次元のマックスウェル方程式の境界要素法ソフトウェア,およびトポロジー導関数の理論的導出,トポロジー最適化シミュレーションを実施することができた。特に,電磁場中に異なる誘電率,透磁率を持つ微小誘電体の出現に対するトポロジー導関数の導出を行うことができた点が大きい。その結果,境界要素法ソフトウェアと導出したトポロジー導関数の正しさを予定より早く示すことができ,トポロジー最適化のアルゴリズム開発とソフトウェア開発に取りかかることができた。また,これらの研究成果は国内の学会で発表するとともに,発表者の一人は優秀講演賞を受賞した。
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今後の研究の推進方策 |
平成25年度に導出した方法を導体が電磁場に出現するトポロジー最適化問題に拡張し,アンテナのトポロジー最適を試みる。また,電磁場の固有振動数解析を経路積分法で行うための理論とソフトウェアを開発する。経路積分法はこれまでヘルムホルツ方程式に対して境界要素法を用いた解析で固有振動数を精度よく計算できることをわれわれ自身の手で示している。本年度は,この方法をマックスウェルの方程式に対する境界要素法に適用する。また,マックスウェルの方程式を解くための境界要素法が,従来の定式化ではきわめて計算時間がかかることが,前年度の研究で判明した。本年度は,従来の方法の高速化を検討するほかに,ベクトルポテンシャルとスカラーポテンシャルに基づく別の定式化も試みることにより,アンテナの設計に有効な高速な境界要素法の開発を推進する。
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次年度の研究費の使用計画 |
高速計算サーバーの購入費用が見積もりよりも少なくてすんだため。 計算ソフトウェアの開発が進んで大量の計算が可能となったので,計算結果のデータ整理を行うためのアルバイト謝金と学会発表のための旅費として使用する。
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