本研究課題では、エナジーハーべスティング等に有用な、空間の電磁波エネルギーの高効率な回収技術の開発に関連して、高効率なアンテナの形状とトポロジーを高速境界要素法とトポロジー最適化法により求めるための技術開発を目的としたものである. 電磁波の解析には,無限に広がるか異空間を厳密に取り扱うことが可能な境界要素法が適しているとされている.しかしながら,最適なアンテナ形状を求めるためには,境界要素法を用いた感度解析,特に穴の出現を含むトポロジーの変化に対して感度を計算するための方法論の確立が必要となっていた.また,最適化の過程においては,形状の変化に応じて繰り返し解析を行う必要があるため,解析後との要素分割や計算の高速化が課題とされている.本年度は,この問題に関連した解析技術を開発するための準備段階として,次のような成果が得られた. (1) 境界要素法である材料の分布に対して,散乱周波数の解析を行うためのアルゴリズムを開発して,まず簡単な問題に対して適用した.問題としては,マックスウェルの方程式よりも解析に時間を要せず,取り扱いが容易な周期構造を有する動弾性体に対して,アルゴリズムの有効性を検証し,有効性を確認した. (2) 電磁波の問題の最も簡単なケースとしてヘルムホルツ方程式で支配される問題を考え,境界要素法に基づくトポロジー最適化のアルゴリズムを開発し,数値実験によりその有効性を確認した. (3) 電磁場におけるトポロジー最適化において必要となる,誘電体,導体の発生,消滅に対応したトポロジー導関数を理論的に導出した.また,電磁波動問題に対する高速多重極境界要素法のソフトウェアを開発して,2次元の電磁波動問題におけるトポロジー最適化問題の解析に適用した.その結果,最適化の過程で生じる複雑な誘電体形状において,高速多重極境界要素法では連立方程式を解く際に,多数回の反復計算が必要となった.
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