先端に対面角136°のダイヤモンド四角錐圧子を取り付けた超硬合金製ハンマを,並ガラスおよび強化ガラスの2種類の試験片に衝突させ,その反発挙動およびき裂発生挙動を比較した.ハンマ落下高さは0.6~6.5 mmである. その結果,強化ガラスでは,落下高さによらずほぼ一定の反発係数が得られるのに対し,並ガラスの場合,全体的に強化ガラスよりも低下し,ばらつきも大きいことが明らかになった.限界破壊エネルギーおよびき裂寸法から見積もったき裂発生に費やされるエネルギーの値は,最大でも衝突前のハンマエネルギーの数%であり,反発係数に及ぼす影響は必ずしも大きくない.ただし,10万コマ/秒の高速ビデオカメラで観察したところ,特に並ガラスの場合,多くの薄片が表面から飛び散っており,これがばらつきに関連している可能性も考えられる. 衝突荷重に近い荷重9.8~98Nで実施したビッカース硬さ試験と,上記反発硬さ試験で形成された圧痕および圧痕き裂の寸法を測定し,それぞれIF法を用いて破壊じん性値Kcを算出したところ,いずれも強化ガラスの値が大きいが,並ガラスでは試験法の相違の影響は小さいのに対し,強化ガラスのビッカース硬さ試験の値は荷重の増加とともに著しく増加した.すなわち,材料によって負荷速度の影響の程度が大きく異なり,Kcを把握する際には注意が必要である. 高速ビデオカメラ観察により,衝突の除荷過程でき裂に変化の生じることが明らかとなった.さらに,レーザドップラー振動計の波形から,並ガラスの場合のみ,ハンマ加速度に著しい振動の生じることが判明した.申請者らの先の金属試料を用いた研究と同様に,脆性材料においてもハンマ振動が有効な評価因子となりうる可能性のあることが示唆され,今後さらに検討する予定である.なお,四角錐圧子ハンマにおいて衝突速度によらず反発係数が一定となる条件を理論的に明らかにした.
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