研究課題/領域番号 |
25630041
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研究機関 | 早稲田大学 |
研究代表者 |
柳沢 雅広 早稲田大学, ナノ理工学研究機構, 客員上級研究員(研究院客員教授) (20421224)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 表面・界面 / プラズモニクス / 表面増強ラマン散乱 / トライボロジ / 埋もれた界面 / 炭素材料 / 分光分析 / 接触 |
研究実績の概要 |
本研究は0.1nmの深さ分解能を有する新しい計測手法を用いて、接触界面近傍の分子構造変化を1原子・分子層レベルでその場観察することにより、接触状態における物質の挙動を明らかにすることを目的とする。新手法は、表面プラズモンを制御する球面センサを測定対象面に接触させた際に、センサを透過した励起光の電界強度を試料界面近傍で増強させることにより、非常に強いラマン散乱光を発光させる。次に焦点を0.1nm毎に試料内部へ移動させ、そのスペクトル変化を解析することにより試料表面および内部界面(埋もれた界面)の構造変化をその場観察する。また液体潤滑膜における分子構造変化を同時観察・解析することにより接触・摩擦・潤滑のメカニズムを明らかにすることにある。 平成26年度では、透過型プラズモンセンサと試作した荷重印加可能なセンサホルダを用いて、さまざまな接触荷重における極薄ダイヤモンドライクカーボン(DLC)膜のスペクトル強度の変化を観察した。その結果、センサとDLC膜の接触による光干渉によるニュートンリングの濃度とスペクトル強度は、荷重が大きいほど大きくなることが分かり、ナノレベルの接触状態がスペクトル感度という指標で観察できることを明らかにした。なお、接触状態でのプラズモン電界の計算を行い、接触モデルが正しいことを確認した。接触モデルは、Ag粒子の変形および異なる粒径を有する粒子の荷重による接触点密度の増加の2つがあることを明らかにした。プラズモン電界の強度はAg粒子と表面の間隔に対しきわめて敏感で1nm以下の距離でも急激に減少する一方、接触状態のAg粒子の荷重による変形はそれに比べて緩やかであり、本法によりnm以下のきわめて微細な接触状態がラマン分光法で観察可能であることを明らかにした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
昨年度完成した0.1nmの分解能で深さ方向プロファイルが測定できる測定装置を活用し、ナノスケールの接触状態を観察できること確認した。透過型プラズモンセンサとDLC膜との接触界面の化学的構造の変化および荷重を負荷したときのスペクトル強度の変化を観察することに成功し、接触メカニズムの実験的、理論的解明の一端を示すことができた。また測定・解析に関しては、電磁界解析によるプラズモン電界の計算を接触モデルと組み合わせ、nm以下の微細な接触状態と表面増強ラマン強度の関係を明らかにする手法を開発した。
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今後の研究の推進方策 |
最終年度は、荷重を負荷したときの接触界面の化学構造の変化に関して測定・解析を行うことを試みる。次に固体薄膜や潤滑膜の動的測定を行ない、原子レベルの接触・変形挙動の解析を行う。最終的には、摩擦力測定機構を加えて、摩擦時の動的挙動と結晶および分子構造の変化をその場観察することを試みる。例えばグラファイトや二硫化モリブデン表面の摺動による構造変化と摩擦の関係、潤滑剤の基油と添加剤の摺動による化学変化(トライボ反応)や化学構造変化など多くの事例について実証実験をするとともに、学術的な観点から従来不明であったトライボロジー上の課題を分子レベルで解明することを目標とする。
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