本研究の目的は気体軸受すきま内に発生する正圧(大気圧以上の圧力)と負圧(大気圧以下の圧力)を巧みに利用して,天井面や垂直壁面上を非接触状態で移動することが可能な「空気力懸垂支持方式の非接触壁面走行体」を開発することである. 本研究で開発する非接触壁面走行体は,静圧気体スラスト軸受,推進・停止用ジェットノズル,コントローラ・センサから構成されるものである.ここで気体軸受については,できるだけ小型軽量で高い吸引力を有するものが必要となる.この気体軸受の設計のためには軸受すきま内流動を解明し,走行体を非接触支持させるために必要な圧力分布,吸引力を求めることが不可欠である. 平成27年度は衝撃波の獲得が可能なTVDスキームを有する商用ソフトウェアのSTAR-CCM+を導入し,シミュレーションを行った.また吸引力特性に及ぼす軸受諸元(給気孔径,軸受半径)及び表面あらさの影響について実験により調べた. 一方,非接触壁面走行体の開発については,平成27年度は静圧気体スラスト軸受と推進・停止用ジェットノズルを有する全方向走行可能な非接触壁面走行体を試作した.試作した非接触壁面走行体について表面あらさの異なる天井面における走行実験を行ない,摩擦が極めて小さい場合の走行や停止に及ぼす表面あらさの影響について調べた.また騒音計測を行い騒音対策についても検討した.
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