研究課題/領域番号 |
25630043
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研究機関 | 旭川工業高等専門学校 |
研究代表者 |
岡田 昌樹 旭川工業高等専門学校, 機械システム工学科, 教授 (40455100)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 無段変速機 / 遠心調速機 / 風力発電機 |
研究実績の概要 |
本研究では,垂直軸小型風力発電機の出力向上に取り組んでいる.この中で,今年度は前年度の成果(非円形歯車機構によるコギングトルクの低減)を日本機械学会年次大会と日本設計工学会秋季大会で発表した.また,垂直軸小型風力発電機に組み込む新たな無段変速機構の開発を行った。 無段変速機構は,連続可変トランスミッションCVTの原理を利用し,その変速制御は風車の回転数に合わせた遠心力を利用するものである。当初,CVTの方式として,トロイダル式を設計製作し,その可能性を模索したが,オイルレスの場合,予想以上にパワーローラで入出力ディスクを制御することが困難であった。そこで,市販のリングコーン式CVT(日本電産シンポ株式会社RXL-90,変速比0~1/1.8)を試用した。 このCVTは変速機ではあるが,基本的に減速機であり,増速ができない。しかし,メカニカルなレバーで変速制御ができるため,組込み機構として実験する装置としては適していた。このレバー操作を遠心調速機構で制御できる方式を設計製作した。 この実験装置は,疑似風車として,0~300rpm以上出力可能なACモーターを上部に搭載し,その下部に今回開発した遠心調速機を接続している。ACモーターの回転は,直軸を介して遠心調速機とその下部にあるCVTへ接続されている。遠心調速機は上部固定のパンタグラフ式の構造であり,上下スライドする下部板に並行リンクしたアームがCVTのレバーを動作させる仕掛けである。 実験方法は,最初に遠心調速機だけをモーター駆動し,その上下スライドの動作確認を行った。結果として,負荷なしの場合は理論計算と同等の動作を得た。続いて,装置全体を組み立て,風車の回転数が0~300rpm回転した場合のCVT出力軸の回転数を計測した。90rpmくらいから遠心調速機が情報へスライドし,300rpmでレバーMAXの位置へ制御できる構造となった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成26年度の研究は,垂直軸小型風力発電機に組み込む無段変速機構の構造を確立し,試作機を製作して各要素パラメータが変速比に及ぼす影響を明らかにするものであった。 当初予定していたトロイダル式CVTが組込み困難となったが,代替方式となるリングコーン式CVTを用いた制御機構を確立でき,その動作結果はほぼ満足できるものであった。試行錯誤の繰り返しではあるが,装置全体の構成要素技術が揃い,おおむね順調に進展している状況である.
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今後の研究の推進方策 |
平成27年度は,平成26年度の研究成果発表と過去2年間に研究した新たな機構を垂直軸風力発電機に組込み,その出力係数を計測する内容である。 まず,学会発表であるが,予定通り日本機械学会年次大会と日本設計工学会秋季大会を希望している. 次に,垂直軸風力発電機への新機構の組込み実験であるが,非円形歯車機構は精度向上のために高精度3次元プリンタによる部品製作を検討している。従来のマシニングセンタによる歯車工作では,誤差が大きく正確な位置合わせが不可能であったためである。無段変速機構は,現在のリングコーン式CVTを用いた制御機構を暫定方式として出力係数の変化を計測する。時間的に余裕があれば,新たなCVTとして,立体カムとワンウェイクラッチを用いた方式を検討しているため,その実現性も検討する。
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次年度使用額が生じた理由 |
平成25年度の研究の中で,非円形歯車機構の組込み実験で,理論と合わない結果があり,今年度その原因探究も行っていたが,結論として,歯車精度が疑われた。非円形歯車はマシニングセンタで製作していたが,エンドミル径の限界もあることから,歯車自体が大きく,その分バックラッシも大きくとらなければならなかった。また,モーター軸と歯形の位置合わせを行う箇所が曖昧なねじ止めであったことも問題点の1つであった。そこで,軸のキー溝と同じ穴形状を持つ非円形歯車を高精度に製作できる加工機械をいろいろと検討した結果,高精度3次元プリンタに可能性があった。その装置を購入するには,70万円程度かかるため,平成26年度の設備備品費を節約して,平成27年度にその設備購入費を確保した。
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次年度使用額の使用計画 |
高精度な非円形歯車を製作できる装置(3D Systems ProJet1200を検討中)を設備する。
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