研究課題/領域番号 |
25630045
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研究種目 |
挑戦的萌芽研究
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
佐藤 岳彦 東北大学, 流体科学研究所, 教授 (10302225)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | バイオ流体力学 / プラズマナノバブル |
研究概要 |
平成25年度は,1.水中プラズマ流による高安定性ナノバブル発生法の開発,2.ナノバブルの気泡径計測・制御法の開発,3.超音波照射によるナノバブル破裂法の開発に取り組んだ.水中に絶縁被覆された0.3 mm径の針状の白金ワイヤ電極とリング状の露出した白金ワイヤ電極を超純水中に設置し,針電極に-6 kVより大きな高電圧を印加することで,水中に微細気泡を大量生成する装置の開発に成功した.水中プラズマ流により生成した微細気泡を含む水を,フィルターを利用し生成物を濃縮し,光学顕微鏡により観察すると,500 nm以下の粒径を有する球状の物体が多数生成されている様子が観察された.そこで,レーザー共焦点顕微鏡により詳細に観察した結果,300 nm以下と見られる微小球体がブラウン運動している様子が観察された.より微小な粒径の計測と統計的な粒径分布を計測するために,動的光散乱法を利用し分析した.これにより,最大頻度が100~200 nmの粒径を有する粒径分布が得られた.さらに,SEMによる観察を行った結果,数十nm~数百nmの球状の物体が観察された.SEM観察では真空中における計測のため気泡は残存していないと考えられるため,観察された微粒子のX線分析を行い,白金や有機物の微粒子が発生していることを確認した.これより,微粒子群にはプラズマ発生時に生成された電極材やコーティング材などからなる微粒子が含まれていることが明らかになった.この微粒子群が固体のみなのか気泡が含まれているのかを判別するために,最大100 気圧まで加圧できる顕微鏡観測チャンバーを利用し観察したところ,いずれの微粒子も変形しないことが明らかになった.そこで,衝撃波照射による微粒子の固気判別法の開発に取り組み,水中に存在する気泡核が膨張したと考えられる気泡生成過程を観察できる,極限微小時空間観察装置を開発した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成25年度に計画した,1.水中プラズマ流による高安定性ナノバブル発生法の開発,2.ナノバブルの気泡径計測・制御法の開発,3.超音波照射によるナノバブル破裂法の開発についての進捗状況は以下の通りである.1.と2.については,針状の絶縁白金ワイヤ電極とリング状の露出白金ワイヤ電極を水中に設置し,負極性高電圧を印加することで簡便に微細気泡を発生する装置を開発した.また,生成した微細気泡をフィルターにより濃縮する手法を開発した.この装置を利用して生成された微細気泡を光学顕微鏡ならびにレーザー共焦点顕微鏡により観察することにより,数百nm以下の微粒子が大量に生成されていることが確認できた.さらに,動的光散乱法を利用して微粒子の粒径分布を計測した結果100~200 nmを最大頻度とする粒径分布が得られた.これらの成果は,平成25年度の計画以上の進展である.しかしながら,微粒子に固体が含まれていることが明らかになったため,新たに微粒子の固気判別法を開発する必要が生じた.ナノサイズ微粒子の固気判別法は世界でも例が無いため,開発に成功すれば世界に先駆けた計測法の提案が可能となる.3.については,固気判別法の開発終了後に行う予定であるため,十分に進捗していない.これらのことを総合的に考慮し,おおむね順調に進展していると判断した.
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今後の研究の推進方策 |
平成26年度は,水中プラズマ流により生成された球状物体の固気判別法の開発を行う.衝撃波による水中気泡生成発生装置ならびに観察装置を平成25年度に開発したが,衝撃波の生成に利用しているスパークにより,強いノイズが発生し衝撃波の圧力計測が困難であること,スパークの強さが安定していないことによる再現性の低下などの問題が生じている.そこで,衝撃波生成用にナノパルスレーザーを購入し,ノイズ発生の低減や再現性の向上を図り,より精度の高い固気判別法の開発に取り組む.続いて,固気判別法によりナノバブル生成の確認と選別をする手法を開発し,当初予定していたナノバブル破裂法の開発を行う.これらの開発を進めた上で,ナノバブルに抗体を修飾する手法の開発,がん細胞の表面にナノバブルを固定させる手法の開発,超音波照射によりナノバブルを破裂させがん細胞にアポトーシスを誘導する手法の開発に取り組む.最終的には,複数種細胞培養時における選択的がん細胞アポトーシス誘導手法の開発を目指す.
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次年度の研究費の使用計画 |
平成25年度に実施した,水中プラズマ流によるナノバブル生成装置の開発,フィルターによるナノバブル濃縮装置の開発,ナノバブルの観察・分析は,既存の施設を利用して行うことで使用額を抑えた.新たに開発した衝撃波による微細球状物体の固気判別装置の開発では,既存のスパーク発生装置を利用し衝撃波を生成したが,衝撃波の生成に利用しているスパークにより,強いノイズが発生し衝撃波の圧力計測が困難であること,スパークの強さが安定していないことによる再現性の低下などの問題が生じたため,ナノパルスレーザーの導入が必要不可欠となり,次年度に購入することを想定し,25年度の予算の使用を抑えた. 平成26年度では,衝撃波発生用ナノパルスレーザーの購入により,微細球状物体の固気判別装置の開発を行う.さらに,ナノバブルへの抗体修飾のための物品の購入を行う.
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