絶滅した生物には,特定の機能に特化して進化し,逆にそのせいで絶滅した「失われた機能デザイン」の例が多い.そこで本研究は,現代にはない新たな機能性の着想を目指して,すでに絶滅した翼形態型腕足動物の殻形態を用いて流体力学的研究を行った.流水実験および流体解析の結果,激動な浅海環境に適応を遂げた翼形態種パキシルテラは,流体力学的に不安定な姿勢を取りつつも,きわめて安定した渦様の濾過摂食水流を形成できることがわかった.このような“受動的渦流発生体”は,殻まわりの水流に応じて適切に殻を開閉し,ロバストな機能性を生み出していたことが明らかになった.
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