研究課題/領域番号 |
25630051
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研究種目 |
挑戦的萌芽研究
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
長田 孝二 名古屋大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (50274501)
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研究分担者 |
寺島 修 名古屋大学, 工学(系)研究科(研究院), 助教 (50570751)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 流体工学 / 流体計測 / MEMSセンサ / 壁面せん断応力 |
研究概要 |
平成25年度は,以下2つの研究を行った. (a)壁面せん断応力計測用ホットフィルムセンサおよびフローティングエレメントセンサの設計/製作/計測精度の検証 ホットフィルムセンサの基板にはシリコンウェハを使用し,温度変化の時定数を小さくするため微細薄膜金属として厚さ250nmの金 (Au)を用い,その下部に10nmのクロム (Cr) の層を設け,その下部に1μmのシリコン酸化膜を有する構造とした.センサの基本的な駆動原理は定温度型熱線流速計と同じであり,加熱部と周囲の温度差を大きくするため,微細薄膜金属は2度折り返すことにより電気抵抗を高めた.加熱要素の幅は10μm,長さは1mmとした.この加熱要素の放熱量から壁面せん断応力を求めた.フローティングエレメントセンサでは微小櫛歯振動電極を利用し,フローティングエレメントの変位量と櫛歯電極の静電容量の変化量の関係から壁面せん断応力を求めた.空間分解能向上のため,受感部となるフローティングエレメントの面積は100μm×100μmとした.較正試験により,これらのセンサにより壁面せん断応力が計測可能であることを確認した. (b)較正試験装置の設計/製作,およびセンサの較正 回転体を用いた較正試験装置を作成した.直径66mmの円柱をモータで回転させることによりセンサと円柱の間にせん断速度を発生させた.円柱の回転数はインバータによって制御された.センサは平板上に設置され,この平板を最小送り10μmの微動装置で制御して円柱と平板間の距離を設定した.せん断応力は円柱とセンサの間で生じる速度勾配が線形であると仮定することで得られ,せん断応力とセンサ出力の関係を求めた.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の計画は(a)壁面せん断応力ベクトル計測用ホットフィルムセンサとフローティングエレメントセンサの設計/製作/計測精度の検証,および(b)較正試験装置の設計/製作,であった.これらの当初計画に対して,実際にホットフィルムセンサとフローティングエレメントセンサを設計・製作し,応答性試験等を行った.また,回転体を利用した較正試験装置を設計・製作し,センサの較正を行った.これらは交付申請書に記載した研究計画に沿っており,研究がおおむね順調に進行していると判断される.ただし,今年度開発したセンサでは壁面せん断応力1成分の計測しかできず,壁面応力ベクトル計測には至っていない.これは次年度の課題である.
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今後の研究の推進方策 |
平成25年度の研究でセンサの開発および性能評価,較正が終了したので,まずはこれを壁面せん断応力ベクトルの計測(壁面せん断応力二成分同時計測)が可能となるよう発展させる.その上で,当初の計画通り,以下の研究を行う. (c)乱流境界層により発生する壁面せん断応力ベクトルの計測と普遍速度分布型と対数速度則のカルマン定数の確定, (d)壁面乱流噴流の壁面せん断応力ベクトルと境界層中速度変動の同時計測, (e)壁面乱流噴流の壁面せん断応力ベクトルと速度/圧力同時計測. (c)では壁面せん断応力センサを設置した平板上に乱流境界層を形成し,壁面せん断応力およびセンサ上の速度分布を計測する.そして,その結果から普遍速度分布型およびカルマン定数の確定を行う.(d)では壁面乱流噴流の壁面近傍の変動速度と壁面せん断応力の同時計測を行い,壁面近傍に存在するコヒーレント渦構造と壁面せん断応力との関係を調べる.(e)では壁面せん断応力と速度三成分/変動圧力の同時計測結果から境界層内の乱れエネルギ収支を算出し,乱れエネルギの輸送と壁面せん断応力,乱流/渦構造の関係について調べる.課題としては,壁面乱流噴流の壁面応力ベクトルの時間変動を捉えるための時空間分解能の更なる向上等があげられる.これを可能とするため,センサの更なる小型化の検討および定温度回路におけるフィードバック回路の見直しを行う.
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次年度の研究費の使用計画 |
当初外注する予定だった較正装置を既存の部品を用いて自作したため,その予算分を次年度に繰り越せることになった.また,センサの製作に関しても専攻内の研究室の装置を無償で借りることができたため,製作(外注)費用が不要となった.以上の理由により,当初の研究目標を達成しつつ,経費の節減を果たすことができた.この経費削減分については,次にも述べるが,主に研究成果発表のための旅費に充てる予定である. まず,初年度の研究成果を海外で発表するための渡航費を必要とする.成果の一部を12月17日(水)-19日(金)にタイのチェンマイで開催されるタイ機械学会国際会議ICoME2014において発表予定である.また,2014年度(最終年度)に得られた結果を国内外で発表するための旅費も必要とする.物品に関しては,研究計画にある通り,壁面せん断応力と速度変動あるいは圧力変動との同時計測を行うため,これらの実験に用いる熱線や圧力プローブ等の消耗品の購入が必要となる.
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