研究課題/領域番号 |
25630052
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研究種目 |
挑戦的萌芽研究
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
酒井 康彦 名古屋大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (20162274)
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研究分担者 |
久保 貴 名城大学, 理工学部, 准教授 (20372534)
寺島 修 名古屋大学, 工学(系)研究科(研究院), 助教 (50570751)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 流体工学 / 光ファイバ / LIF / 濃度計測 / 高シュミット数 / 拡散 |
研究概要 |
平成25年度は当初の研究計画に基づき,以下の3つの研究を行った. 1.プローブ射出光の大きさと集光点距離の検討:光ファイバ先端にシリカグリンレンズを用いることで,プローブ先端から離れた位置に集光することが可能になった.これにより,プローブから射出される光のビーム径に微小化を図ることができた.また,プローブから離れた位置に集光することで,計測点とプローブ先端に間隔を設けることができるため,プローブ挿入による計測結果への影響を小くすることが可能となった. 2.レンズチューブの設計/製作とレンズチューブ伝送光の伝送精度の検証:新型光ファイバプローブでは,集光レンズとバンドパスフィルタを用いてレンズチューブに入射した蛍光とレーザ光のうち蛍光のみを分離してフォトマルへ伝送する方式をとるが,この伝送における光量の損失やフィルタのカットオフ特性を評価した. 3.光ファイバ/レンズチューブ/光カプラのカップリング,液中物質濃度の計測と精度検証:実際に新型光ファイバプローブを製作し,その焦点距離の評価など,プローブの分解能の検証を行った.また,実際の濃度場計測における計測精度を検証するために,参照用データとして,既存の実験設備を使用して,従来の計測技術(対抗型光ファイバプローブ)により液中軸対称噴流における高シュミット数物質拡散場の計測を行った.さらに,新型光ファイバプローブによる濃度計測の実験準備を行った.とくに,相対的空間分解能の向上を目指し,大型水槽の設計製作を行った.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究の目的は,液中拡散物質の濃度計測用LIFプローブの開発であった.プローブの特徴は,(1)プローブの低侵襲性,(2)高空間分解能,(3)高精度な簡易計測の実現,の三点である.(1)と(2)は細径光ファイバ(50μm)と射出光のビーム直径を微小化するためのシリカグリンレンズ融着で実現することを試みた.(3)については,光カップラとレンズチューブで射光と受光を同一の光ファイバで行い,焦点調整を不要とすることで実現を試みた.その結果,ビームスポット直径が60μm,ファイバプローブ先端からビームスポットまでの距離が約500μmの新型光ファイバプローブを開発することが出来た.これは,焦点調整の必要の無い光学的濃度計測センサとしては世界最高レベルの分解能であり,したがって,(1),(2),(3)のすべての特性はほぼ実現されている.以上より,当初の目的に沿う新型光ファイバ型LIFプローブの開発にほぼ成功したと判断される.ただし,実際に新型光ファイバLIFプローブを使用して,液中での高シュミット数物質濃度の計測やデータ解析はまだ終了しておらず,これは次年度の課題である.
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今後の研究の推進方策 |
平成25年度の研究で,新型光ファイバ型LIFプローブの開発と大型水槽の設計製作はほぼ終了したので,平成26年度は,当初の計画に則し,以下の研究を行う. 1.大型水槽および新規開発プローブによる軸対称噴流拡散場における濃度計測:ここでは,まず,平成25年度に製作した大型水槽を用いて,従来の計測技術(対抗型光ファイバプローブ)により軸対称噴流拡散場を対象とした計測を行う.次に,同じ軸対称噴流拡散場を新型光ファイバLIFプローブにて計測し,それによって得た計測結果を従来の計測技術による計測結果(平成25年度に得た旧水槽での計測結果や今回取得する大型水槽での対抗型光ファイバプローブによる計測結果)と比較し,空間分解能や時間応答性について,新型光ファイバLIFプローブの有効性を検証する. 2.普遍平衡領域の存在の有無の証明と微小空間での拡散混合現象の解明とモデル化:ここでは,普遍平衡領域のうち,特に慣性対流小領域よりも高波数帯域に存在する粘性対流小領域に注目して考察する.本研究の対象とするようなシュミット数が1 以上の高シュミット数乱流拡散場においては,速度変動の最小スケールであるコルモゴロフのマイクロスケールηよりも小さなスケールη'でスカラー(物質濃度)の時間変動が生じる.このため,1/η << κ << 1/η'の波数領域では速度変動のスペクトルが粘性による散逸の領域に入る一方でスカラー変動のスペクトルはスカラー分子拡散の影響を受けずに平衡状態を保つ.この粘性小領域におけるスカラースペクトルは波数κの-1 乗に従うものと予想されるため,平成25年度の製作した大型水槽を用いて,新型光ファイバLIFプローブによる計測結果から,この点を明らかにし,その上で,微小空間領域での高シュミット数物質拡散混合現象のモデル化(たとえば混合時間スケールの評価とモデル化)を試みる.
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