研究課題/領域番号 |
25630053
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研究種目 |
挑戦的萌芽研究
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研究機関 | 愛媛大学 |
研究代表者 |
保田 和則 愛媛大学, 理工学研究科, 教授 (80239756)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | ナノスケール流れ / マイクロスケール流れ / 流れの可視化 / 流速測定 / 電子顕微鏡 / イオン液体 |
研究概要 |
マイクロスケールの流れ場では通常のスケールの流れ場と異なる現象が現れるが,さらに小さなナノスケールの流れ場の現象についても注目されてきている。しかし光学顕微鏡ではナノスケールの流れ場の観察は難しい。そこで本研究では,光学顕微鏡よりも高い分解能を持つ走査電子顕微鏡(SEM)による微小スケール流れ場の観察を目的とする。 SEMによる流れ場の観察では高真空のチャンバー内に流路を設置する必要があるが,液体の多くは真空チャンバー内においては蒸発する。そこで,蒸気圧の極めて低いイオン液体を用い,真空中での流れを実現した。 今年度の成果は、SEMを用いた内部流れ場の観察を行ったことである。これまでの研究では液面が露出しているオープンチャネルの観察にとどまっていた。観察は二次電子像で行った。二次電子は物体表面近くから発生するため,管壁が厚いと電子がさえぎられ,内部流れ場を観察できない。そこでオープンチャンネルに,電子線が透過する薄膜をフタとしてかぶせることでチャンネルを構成し,内部流れ場の観察を行った。その結果,薄膜越しに流れ場を観察することができ,流速を計測することができた。薄膜として市販の透過型電子顕微鏡(TEM)用のプラスチック支持膜付グリッドを使用した。プラスチック支持膜の膜厚は40~50 nmであり,膜厚が非常に薄いため,SEMの加速電圧でも電子線が透過することができる。 今年度はSEMを用いた内部流れ場の観察と速度の計測を行うことができた。しかし現時点ではチャネルと薄膜との隙間に流入した浅い流れ場の観察であり,より深い位置まで流れ場を観察することはできていない。本研究の目的は,より小さなスケールの流れ場の観察であるので,チャンネルの深さや膜越しのごく近傍しか観察できていない問題については,流路スケールを小さくすることによって次年度に解決できると期待できる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
今年度の成果は、SEMを用いた内部流れ場の観察を行ったことである。これまでの研究では液面が露出しているオープンチャネルの観察にとどまっていた。観察は二次電子像で行ったが,二次電子は物体表面近くから発生するため,管壁が厚いと電子がさえぎられ,内部流れ場を観察できない。そこでオープンチャンネルに,電子線が透過する薄膜をフタとしてかぶせることでチャンネルを構成し,内部流れ場の観察を行った。その結果,薄膜越しに流れ場を観察することができ,流速を計測することができた。 内部流れを電子顕微鏡で観察でき,さらに流速の計測まで行えたのは大きな成果であり,次年度の国際会議で発表する予定である。以上のことから,本研究は順調に進んでいるといえる。
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今後の研究の推進方策 |
次年度は,チャネル内の比較的深い位置までの流れの可視化と流速測定を行う予定ある。フタとしての薄膜の接着方法を改良することで実現することを考えている。また,試料流体に非ニュートン性を持たせることで,ソフトマターの微小流れの可視化を行う予定である。
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次年度の研究費の使用計画 |
次年度使用額が生じた理由は,発表した国際会議が国内で,しかも近いところで行われたため,旅費が安価で済んだためである。さらには,購入を予定していたCCDビデオカメラが製造中止になっていたことも理由のひとつである。 次年度は,海外(オーストラリア)および沖縄で開催される国際会議2回に参加するために旅費がかかるため,それに充当する予定である。また,高価な試料流体の購入に充当する予定である。
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