SEMを用いて微小スケール流れの可視化を行った。流路は長さが2mm,幅が0.3mmまたは0.5mm,深さが0.1mmまたは0.3mmの真鍮製である。この流路にコロジオン膜でフタをすることで内部流れを実現した。試料流体にはイオン液体を用いた。流れをトレースするための粒子には直径3μmのプラスチック球に金コーティングを施したものを用い,SEMによる可視化が可能となる。前年度では流路とフタとの隙間にしみ出た流れの速度を測定するにとどまったが,本年度はコロジオン膜越しに流路内の流れの流速を測定することができた。しかし,SEMのチャンバー内で微小流れの流量をコントロールすることが困難であり,すでに実績のあるフタのない流路内で測定できたような内部流路内の詳細な速度分布を測定するまでには至らなかった。今後は,SEMのチャンバー内で安定した微小流れを実現することが重要であろう。 また,SEMを用いた流れの可視化結果との比較のために,エバネッセント光を用いた流れの壁面近傍の可視化実験も並行して行った。その結果,ニュートン流体であるグリセリンでは壁面近傍で滑りは観察されなかったが,ポリマー流体では壁面近傍においてニュートン流体には見られない滑り現象が測定された。また,ポリマーの種類(アニオン性・ノニオン性・カチオン性)によっても滑りの大きさが異なることが明らかとなった。これは壁面とポリマーとの電気的な干渉の結果であると考えられる。本研究では,SEMを用いた測定結果とエバネッセント光を用いた測定結果の比較までには至らなかったが,今後は,チャンバー内での定常流れを実現することで両者の比較が可能になると考えられる。
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