研究課題/領域番号 |
25630055
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研究種目 |
挑戦的萌芽研究
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研究機関 | 上智大学 |
研究代表者 |
渡邉 摩理子 上智大学, 理工学部, 准教授 (80452473)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 混相流 / 燃焼 |
研究概要 |
火災旋風を模擬したラボスケールの旋回火炎を発生させる実験装置を製作した。実験装置は、火源、火源を中心として設置される4枚の衝立及び送風装置から構成され、縦0.5 m、横0.5 m、高さ1.0 mとした。衝立の位置は可変であり、衝立間に隙間を空けるようにして設置した。本研究では、約0.1 mの隙間を設けた。火源にはアルコールバーナを使用し、燃料にはエタノールを使用した。送風装置は2カ所の衝立間の隙間に1個ずつ設置し、旋回火炎が発生するように位置や流量を調整した。アルコールバーナに点火すると高さ0.1~0.2 mの火炎が形成され、送風装置により空気を送り込むことで高さ約0.6 mの旋回火炎を発生させることができた。次に、粒子径範囲が0.25~60 μmであるスモークを流入させ、PIV(粒子画像流速測定法)により火炎近傍のガス流速を計測した。水平断面の速度分布から、旋回流が発生していること、火炎近傍では速度が大きくなること、瞬間的な最高流速は約7.5 m/sであることが確認できた。また、K型熱電対により中心軸上の気相温度を計測したところ、バーナからの高さ0.2 mの位置で最高温度891 Kを示した。以上のように、旋回火炎近傍の流動構造や火炎構造の概略を把握することができた。 また、燃焼粒子からのガスの噴出しあるいは燃焼粒子周りのガス温度変化が粒子の抗力・揚力に及ぼす影響を調べるため、粒子周りの流れの直接数値解析も実施した。粒子の表面に非一様な噴出しを与えたところ、鉛直方向に低速の噴出しを与えた場合には噴出しと逆向きの揚力が増大し、噴出し速度が主流速度の50%を超えると揚力は減少した。また、粒子表面の温度を上昇させると、抗力の圧力成分は増加し、揚力の圧力成分は減少することが分かった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
当初の計画と異なる設計になったものの、火災旋風を模擬したラボスケールの旋回火炎を発生させることが可能な実験装置の製作に成功した。また、予定していたPIVによる速度場の計測を実施することができた。一方、バーナを地面に直接設置したためにシード粒子を火炎基部に供給し難いという問題の他、シード粒子をPIVに適した濃度で一様に供給できないといった問題もあり、火災旋風基部の流動構造解明及び次年度以降に製作予定の実験装置の製作に必要なデータを十分に取得することができなかった。また、当初の計画では、燃焼する固体粒子周りの流動観察を行うための実験装置の製作及び粒子周りの流れの速度場計測を行う予定であったが、旋回火炎発生装置の設計・製作を優先して進めたため、計画を変更して数値解析的研究を実施した。以上のように、実験装置製作の点から達成度をやや遅れていると判断した。一方で、シミュレーションにより、燃焼する固体粒子にかかる抗力や揚力に関わる知見を得ることができたことから、当初の計画以上の進展もあった。
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今後の研究の推進方策 |
次年度においては、まず、旋回火炎を発生させる実験装置の改良を行う。はじめに、PIV用の画像を鮮明に得るため、シード粒子の選定及びシード粒子供給方法の変更を行う。次に、火炎基部に対してPIVやシュリーレン法を適用するため、バーナ位置を上方へ移動させる改良を行う。装置改良後、前年度に計測が困難であった火炎基部を対象に、計測面数を増やしてPIVによる速度分布計測を実施する。また、キセノン光源装置及び補助平面鏡を購入し、当該年度に購入したシュリーレン凹面鏡、ナイフエッジ、結像レンズと合わせて使用してシュリーレン撮影を行い、火炎基部の流れの可視化を実施する。 さらに次年度以降、(1)実験風洞製作及び(2)燃焼粒子周りの流動構造を調べるための実験装置の製作を行う計画であるが、これらの装置の製作に着手する前に、現在進行している、上述の実験装置の改良を優先させる。ただし、スケジュールが大幅に遅れないよう、事前に文献調査及び情報収集を推進する。(1)については、火災旋風基部の流動構造の実験データに基づいて設計を行う予定のため、現段階では具体的な設計を進められないが、関連の文献等で風洞設計に関する情報収集を行う。(2)については、固体粒子の燃焼に関する文献を参考に装置のサイズや流量等の設計を進め、さらに燃料として用いる粒子の調達を行う。この他、シミュレーションを並行して実施して実験データを補完し、研究のスピードアップを図る。
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