研究課題/領域番号 |
25630056
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研究種目 |
挑戦的萌芽研究
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研究機関 | 東洋大学 |
研究代表者 |
望月 修 東洋大学, 理工学部, 教授 (50157830)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 細胞質流動 / 物質輸送 / マイクロPIV 計測 / ナノパーティクル / 水循環 / 葉脈 / 気孔 / 蒸散 |
研究概要 |
植物細胞内流れ(細胞質流動)と成長に関わる物質輸送の関係を解明するために、マイクロPIV可視化計測によるオオカナダモの細胞内流動計測を行った。マニピュレータに取り付けられたインジェクターで細胞内に可視化用ナノ蛍光粒子を注入し、その動きから本当に何らかの液体(細胞質基質)が流動しているのかということを確認した。その結果、蛍光粒子は通常の顕微鏡で観察される顆粒(細胞小器官)の動きと同じ動きをしていることが明らかになった。すなわち、細胞質基質に流動が認められるということである。まだ残る疑問は流動と顆粒との運動にどのような相関があるか、ということである。すなわち、顆粒の動きがその場の流動とどのような関係があるかということである。これに関しては次年度以降で研究していくことになる。 もう一つの研究は、樹木における水の流れを解明することである。根から吸い上げた水が最終的に葉から蒸散するとすると、その終端の葉における流れを観察することで吸い上げる機構を明らかに出来るのではないか、という観点から研究を行った。ナンテンの葉を用いて、葉脈の流れを可視化計測した。蛍光溶液を吸わせることによって、その付け根から葉脈網に行き渡る様子を観察した。水の吸い上げの機構として、気孔からの蒸散、細管の毛細管現象、細胞間の浸透圧、等がある。これらの内どれか一つが正解であるということはないと思われるので、それぞれの吸い上げに及ぼす寄与度を調べた。それには、葉の気孔をロウで潰したもの、細胞を取り去ったもの、穴を開けて葉脈を分断したもの、を用い、それらの結果から連立方程式を解く形で、寄与度を調べた。その結果、吸い上げに蒸散がほぼ60%寄与していることが分かった。ただし、ミクロ的にどのように蒸散するのか分からないので、次年度以降の研究となる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
3年計画で植物における水・物質循環機構の解明を行うわけであるので、全体目標に対する達成度は35%である。25年度に行うべき項目に対する達成度に関しては、サップフローメータを用いた維管束内流れの計測が出来ていないので、80%の達成度であると言える。
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今後の研究の推進方策 |
植物細胞内流れ(細胞質流動)と成長に関わる物質輸送の関係解明に関しては、マイクロPIV可視化計測による細胞内流動計測を継続していく。特に顆粒の運動と流動との関連に関して調べる。また、気孔付近の蒸散について、計測できる方法を探る。 維管束内流れのマイクロ流動システムへの応用に関しては、市販のサップフローメータと自作サップフローメータによる導管内流量計測とシュリーレン法を用いた蒸散量の直接計測を試みる。これにより、水の吸い上げ量と葉からの蒸散量とのバランスを見積もることを行う。
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次年度の研究費の使用計画 |
次年度に市販されているサップフローメータの購入を計画しているため次年度使用額が生じた。今後の研究の推進方策で示したとおり、市販のサップフロー自作サップフローメータによる導管内流量計測とシュリーレン法を用いた蒸散量の直接計測を試みる。これにより、水の吸い上げ量と葉からの蒸散量とのバランスを見積もることを行う。 次年度使用額と次年度の請求額を合わせ、メイワフォーシス社製サップフロー測定システムの導入を計画している。これを導入すると次年度使用額と請求額の50%程度となる。残り50%は自作サップフローメータ開発に伴う物品費が10%、研究成果の発表に伴う旅費が25%、人件費・謝金が10%、その他が5%として使用を計画している。
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