樹木における水の流れを解明することを目的に研究を行ってきた。根から吸い上げた水が最終的に葉から蒸散すると仮定し、その終端の葉における流れを観察することで吸い上げる機構を明らかに出来るのではないか、という観点から研究を行った。ナンテンの葉を用いて、葉脈の流れを可視化計測した。蛍光溶液を吸わせることによって、その付け根から葉脈網に行き渡る様子を観察した。水の吸い上げの機構として、気孔からの蒸散、細管の毛細管現象、細胞間の浸透圧、等がある。これらの内どれか一つが正解であるということはないと思われるので、それぞれの吸い上げに及ぼす寄与度を調べた。それには、葉の気孔をロウで潰したもの、細胞を取り去ったもの、穴を開けて葉脈を分断したもの、を用い、それらの結果から連立方程式を解く形で、寄与度を調べた。その結果、吸い上げに蒸散がほぼ60%寄与していることが分かった。葉に人工的な損傷をさせたモデルを作成することで葉脈のネットワーク構造の理解を工学 的な観点から行い、葉脈ネットワークの損傷に対する評価を行った。また、実際に損傷を与えた葉に蛍光色素を吸 わせることで損傷した葉脈における流れを調べた。損傷による葉脈の構造的変化と吸水の関係を元に葉脈ネットワークの頑強性について調べた。このために、葉脈のフラクタル次元をボックスカウント法を用いて調べた。実験としては、葉に穴を開け葉脈を切断し、その結果どのように葉全体に水を行き渡らせるかを可視化観察した。
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