研究課題/領域番号 |
25630057
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研究種目 |
挑戦的萌芽研究
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研究機関 | 関西大学 |
研究代表者 |
関 眞佐子 関西大学, システム理工学部, 教授 (80150225)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 光コヒーレンス断層法 / 血球 |
研究概要 |
血液は、液体である血漿に、赤血球、白血球、血小板から成る血球成分が高濃度に浮遊しているサスペンションであり,血球の3成分はその大きさや物性の違いのため、血液流れ中での挙動が異なっている。特に,生体内における各血球の血管断面内分布には大きな違いがあり,それぞれの生理機能に密接に関係している。しかし血液は不透明であるため、通常の光学顕微鏡を用いた計測は困難で、そのメカニズムの詳細については未だ明らかにされていない。本研究では、そのメカニズムを流体力学的に解明するために、光コヒーレンス断層法(OCT)を用いた粒子挙動計測システムを開発し、血液流れ中での血球運動の計測に応用することを目的とした。 本年度は、(1) OCTシステムの試作と性能評価, (2) 数値シミュレーションによる血球挙動の解析を行った。まず、(1) 装置の試作においては、光源や干渉計、光学系、PC等を用いてOCTシステムを製作し、調整を行った。製作したOCTシステムを用いて、内径0.1-1 mmの微小流路内に直径10及び 20ミクロンのポリスチレン粒子を封入して撮像した。その結果、粒子のOCT像を得ることができ、流路内における粒子位置の測定精度は10ミクロン程度であることが分かった。(2) 数値シミュレーションにおいては、血球を模擬するモデル粒子を用いて管内流れ中の粒子運動の数値解析を行った。液滴をモデルとした2次元解析では、サイズが大きくて表面張力の小さな粒子は流路の中央付近を流れる割合が大きく、逆に小さくて表面張力の大きな粒子は流路壁に近寄る傾向があることが示された。この結果は、赤血球と血小板が混在して流れる場合の分布を血球の物性に関係づけて説明する結果であると考えられる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
OCTシステムの試作と性能評価に関し、ほぼ計画通りOCTシステムが製作でき、性能評価も行うことができた。具体的には、経費を抑えるため主として現有の機器(光源、干渉計、光学系、PC等)を用いてOCTシステムを製作したことから空間分解能が当初の計画より若干劣るものの、直径10および20ミクロンの粒子の撮像に成功した。今後流れ中の粒子運動の計測を行うために撮影速度を速くする必要があると考えられ、それに向けた改良を行う予定である。また、管内流れ中の粒子運動の数値シミュレーションは計画通り実行でき、おおむね順調に進行している。
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今後の研究の推進方策 |
管内流れ中の粒子運動の計測を可能とするため、製作したOCTシステムの改良を行う。現在時間領域OCTとなっているが、運動する粒子の計測のためには撮影速度が不足する可能性があるので、周波数掃引レーザ光源を用いることにより周波数領域のOCTシステムを構築し、高速の撮影を可能にする。この改良型OCTシステムを用いて微小流路に粒子を流す実験を行い、粒子の運動が追跡可能であることを確かめる。更にOCTの光源の調整と解析法の最適化を行うことによって,空間分解能を向上させることを試みる。
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次年度の研究費の使用計画 |
主として現有の機器を使用してOCTシステムを製作したこと、および本年度は装置の開発・製作と性能評価・調整が中心であったため、これらを研究代表者と連携研究者が担ったことにより、物品費および人件費が抑えられた。 製作したOCTシステムを血液流れへ応用するための実験用物品費と実験補助の人件費、および研究成果発表のための旅費等に使用する予定である。
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