本研究では,水・油・アルコール等で利用可能な,感温性中空マイクロカプセルを開発する.カプセル化により機能性分子の回収を容易にして環境負荷低減につなげる.溶存物質等による目的外の消光を抑制し,複雑なin situ校正を簡易化または省略可能な温度分布の定量可視化技術に適用可能な中空マイクロカプセルを開発することを目的としている.具体的には,温度依存性を示す蛍光物質を殻材に重合し,粒径0.5~1.0μmの中空マイクロカプセルを作成するとともに,作成条件を最適化してカプセル作成法を確立する.平成26年度は1)感温性蛍光物質を重合した中空カプセルの開発と最適化,2)光学特性評価,3)温度分布の定量可視化計測を行った. 1)では,一種類の蛍光物質を含むカプセルに加え,複数の蛍光燐光物質を重合した二波長強度法用のカプセル作成を行った.センサ物質の溶媒種を3種まで,カプセル形成用ポリマーを3種,影響励起波長を8種まで拡張して作成した.分散媒の添加についても8種の分散媒を評価した.蛍光物質の組合せについては50種超の評価を行った. 2)では,感温性,単位時間当たりの発光強度,スペクトル,粒子径分布,光劣化特性,カプセルの凝集性やポリマーの劣化について評価を行った.3%/℃以上の非常に高い感温性を示すものを複数発見した.極微量の添加によって数カ月以上の長期に渡り分散性浮遊性を維持できる分散媒を見出した. 顕微鏡を用いた評価試験では,低波長側の蛍光分子の発光強度が小さく,S/N比の改善が必要であることが分かった.また,PIVに多用される532nmの励起波長で約2%/℃の応答性を持つカプセルを用いて,マクロスケールでの温度速度同時計測を行った.複雑形状をした熱交換器内において微小なよどみ部で温度が上昇し,高温部が周期的に剥がれることによる主流の脈動を定量的に捉えるなど熱交換器の評価を行った.
|