研究課題
1K以下の極低温は物性研究においてきわめて重要な技術である。とりわけアクチノイド、希土類化合物を含む重い電子系物質のエネルギースケールは小さいので、1K以下の極低温実験が不可欠である。従来、1K以下の極低温実験は希釈冷凍機などを用いて行われてきた。この装置は、大型で室温から極低温まで温度下げるのに、最低でも2、3日かかる。最近、重い電子系物質の新奇超伝導体が続々と発見されており、もっと簡便に短時間に、しかも液体ヘリウムの消費を極力抑えた極低温技術の開発が待たれていた。本研究は、常磁性塩を用いた断熱消磁法による冷凍機、それを用いた超高速物性測定法の開発を目的としたものである。本年度は、昨年度に引き続き断熱消磁冷凍機(ADR)の開発を行った。クロムミョウバンを用いた断熱消磁冷凍機を多数作製した。低温物理物性測定システム(PPMS)にセットし、迅速に0.1Kまでの電気抵抗測定を行えるように常磁性塩ピルの配置、配線による熱流入の抑制、迅速に測定可能な測定プログラムなどさまざまな装置の最適化を行った。その結果、室温から0.1Kまで2時間以内に到達できる断熱消磁冷凍機が完成した。これを用いて、強磁性超伝導体URhGe、UCoGeやその他の重い電子系超伝導体UBe13、UPd2Al3、URu2Si2、UPt3など多数の試料の0.1Kまでの電気抵抗測定を行い、試料を評価した。UCoGeにおいては、150個以上の試料を電気抵抗測定し、残留抵抗比RRRが100を越える純良な試料を得ることに成功した。これらの試料は圧力実験、極低温磁化、中性子散乱、高エネルギーX線、光電子分光など多数の実験を行うために多数の研究者に提供された。断熱消磁冷凍機の開発の成功を受けてプレス発表を行なった。日経新聞、河北新報などで報道された。また、現在、本技術を用いた製品化が進行しつつある。
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http://www.tohoku.ac.jp/japanese/2014/09/press20140903-01.html