研究課題/領域番号 |
25630062
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研究種目 |
挑戦的萌芽研究
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
白樫 了 東京大学, 生産技術研究所, 教授 (80292754)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | ガラス転移 / 蒸発乾燥 / 臨床検体 |
研究概要 |
検体としての細胞の内部の物質を保存するためには,電気破砕により細胞膜を確実に破砕すると同時に,劣化反応が進行するまえに保護物質により速やかに固定する必要がある.そこで,当該年度では,電極を保護物質で覆ったデバイスを用いて,電気破砕-乾燥固定を速やかに行える条件実験的に調べた.具体的には,1)電極上で膜破壊が実現する電気操作条件と2)電極を覆う保護物質の添加条件と破砕率を実験的にしらべた.実際の検査の便宜を考え,数珠状の平衡電極が基板にパターニングされた市販の16wellのプレートを用いた. 1)では,このプレートにJurkat細胞(Tリンパ球)を10万個-100万個/mLの濃度で分注して,細胞の誘電泳動がおきる電極間に印加する電場の周波数と有効電界強度,および80%以上の細胞の原形質膜が破砕する電場の周波数,有効電界強度と印加時間の条件を実験的にもとめた.電気破壊は,物理的な細胞膜の破壊なので,界面活性剤とはことなり,細胞内の物質への化学的な影響による劣化やDNAやRNAの短小化が抑制できると利点がある. 2)では,1)のプレートに乾燥保護物質としてトレハロースとデキストランの混合液を入れて混合液量(単位面積あたりの注入量)に対する乾燥後にプレート電極表面にできる保護物質の厚さを測定した.さらに,このような種々の保護物質厚さを持つ電極にJurkat細胞を分注し,1)の差最適条件で破砕した時の破砕率を測定した.その結果,保護物質の注入量により保護物質の厚さは変化するものの,実験範囲では保護物質で被覆されていない電極と同じ条件で同程度の破砕率が得られることがわかった. 以上の結果から,簡便な分注プレートをもちいて,検体の分注と電場印加だけで短時間で細胞内の物質を物理的に取り出すことができることがわかった.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の予想から大きく外れない結果が得られているため.
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今後の研究の推進方策 |
保護物質水溶液の乾燥過程で乾燥表面に乾燥した固体層が生成するが,乾燥した固体層は層下に水分を多く含んだ状態の溶液を含むため,検体の劣化を促進してしまう可能性が高い. そこで,次年度は,保護物質水溶液の乾燥過程で乾燥表面に乾燥した固体層が生成する条件を実験的に調べることと,開発した手法で実際に細胞内物質を乾燥保護した後の劣化状況を評価することを予定している.
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次年度の研究費の使用計画 |
今年度の実験では,試料をcell lineを用いたため,病院での実験がなく,予定していた装置の購入を次年度以降に移したため. 実際の検体試料を用いる場合,当初予定していた電場印加に用いるファンクションジェネレータを購入する予定である.また,実際の検体を用いる前に,市販のバイオマーカーに相当するタンパク質で乾燥保存の予備実験を行う予定であり,助成金の一部はその購入と活性評価に必要な検査薬剤の購入に用いる.
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