チャーを燃料とするダイレクトカーボン燃料電池(DCFC)では,燃料にチャーを溶融炭酸塩中に分散させたカーボンスラリーを用いる.Li2CO3/Na2CO3/K2CO3の混合炭酸塩の混合比を変化させることで,溶融炭酸塩の表面張力が変化し,カーボンスラリーにおける固体炭素の濡れ性が変化することが予想される.今年度は,混合炭酸塩の混合比が固体炭素の濡れ性に及ぼす影響を明らかにし,DCFCの発電特性へ与える影響について検討した. Li2CO3,Na2CO3およびK2CO3のモル分率を変化させ,表面張力の値を操作し,さまざまな条件のカーボンスラリーを調整した.混合炭酸塩に対する活性炭の質量比は1.0 wt%とした.炭酸塩および活性炭の粉末を十分にかく拌した後,Ar雰囲気下で1073 Kまで昇温させ,カーボンスラリーとした後,冷却固化したカーボンスラリーの観察を行った.溶融炭酸塩の表面張力が200 mN/m程度以下の場合は,冷却固化後に表面が滑らかなカーボンスラリーを得ることができたが,表面張力が200 mN/m以上の場合は,冷却固化したカーボンスラリー表面に活性炭粒子の析出が見られ,固体炭素の濡れ性が著しく低下することが明らかになった. 続いて,これらのカーボンスラリーを用いてDCFC発電実験を行った.固体炭素の濡れ性が良好な場合(表面張力が200 mN/m程度以下),長時間連続発電を行うことができた.しかし,濡れ性が良好でない場合(表面張力が200 mN/m以上),安定的な連続発電を行うことは困難であった.DCFCの発電では,電極表面にカーボンおよび炭酸イオンが供給された後,三相界面で反応が進行する.つまり,固体炭素が溶融炭酸塩に対して十分に濡れていない条件では,3相界面が連続的に形成されていない可能性が示された.
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