研究課題/領域番号 |
25630068
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研究種目 |
挑戦的萌芽研究
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
高田 保之 九州大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (70171444)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 熱工学 / 沸騰 / 濡れ性 / 気泡 / 溶存空気 |
研究概要 |
H25年度は,主に(1)蒸気泡ドームの安定存在条件と溶存空気の影響,(2)気泡ヒートパイプによる熱輸送メカニズム,の2項目についての検討を行った. (1)蒸気泡ドームの安定存在条件と溶存空気の影響・・・・サブクール状態で撥水斑点上に安定して存在する蒸気泡について,気泡内部の温度分布を計測した.その結果,サブクール10Kで,加熱面温度が96℃の場合,気泡内部は直線的な温度分布を持っており,気泡頂部で92.5℃の値が計測された.気泡周囲の液体も同様の垂直方向温度分布であり,水平方向には温度差はない.このことから,気泡内部は水蒸気と溶存空気の混合物であり,92.5℃の飽和圧力77kPaの水蒸気分圧と24kPaの空気分圧の混合気体であると推定される. (2)気泡離脱周期の計測・・・・単一の撥水斑点をコーティングした伝熱面で,気泡の離脱周期を観察した.例えばサブクール10Kの場合,伝熱面温度97.3℃,99.9℃,102.8℃に対して,離脱気泡周期は,それぞれ329s, 130s, 82sであった.すなわち,伝熱面の三相界線で蒸発する水蒸気の中に含まれる空気は再び溶存することなく,気泡内部に蓄積し,空気がある程度溜まったところで浮力により伝熱面から離脱するという現象が観察された. (1)(2)で得られた知見は沸騰科学において新規で非常に有用である.特に負の過熱度で気泡が発生,成長,離脱を周期的に繰り返すという現象は,通常の金属伝熱面では観察されない.この現象については今後も注意深く検討して行くことが重要である.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
H25年度の研究成果により,過冷却下で存在する沸騰気泡の正体が,水蒸気と液中から析出した空気の混合物であるということが特定できた.ガスクロマトグラフによる溶存空気量の定量測定を試みたが現有の装置では十分な精度で測定できないことも判明した.しかしながら,H25年度に導入した新たなガスクロマトグラフを活用すれば定量測定できる見込みである.
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今後の研究の推進方策 |
H26年度は,液中に溶存している空気をほぼ取り除いた条件で沸騰試験を行い,負の過熱度で発泡開始できるかどうかを調べる.また,ガスクロマトグラフによるppmオーダーでの空気量を高精度で測定し,気泡サイズ,離脱周期などとの関連を定量的に調べる予定である.その際,気泡内部の温度分布を今一度高精度で測定することも検討中である.
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次年度の研究費の使用計画 |
伝熱用の撥水コーティングを鍍金会社に発注して製作しているが,技術的な問題から年度内の製作が間に合わなかった.このため実験装置製作が次年度に繰り越しとなったのが主な理由である. 伝熱面の撥水・親水コーティングについては,別の方法を検討中であり,平成26年度中には当初計画を完了する見込みである.
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