研究課題/領域番号 |
25630070
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研究種目 |
挑戦的萌芽研究
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研究機関 | 慶應義塾大学 |
研究代表者 |
泰岡 顕治 慶應義塾大学, 理工学部, 教授 (40306874)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 分子動力学 / 分子シミュレーション / 淡水化 |
研究概要 |
アクアポリンの水分子透過メカニズムを分子レベルで解明するために,アクアポリン/細胞膜/水分子の系について分子動力学シミュレーションを行った.アクアポリンの水分子の取り込み口の機構に着目した.アクアポリンの入り口付近の水分子のダイナミクスを水分子の回転緩和時間や拡散係数を計算することで解析した.本系は10万原子以上,100 ns以上の計算を行った.また,アクアポリンの穴の内を水分子は一列になって透過するが,透過の駆動力については解明されていない.前後に存在する水分子から受ける熱揺動であるという考えもあるが,アクアポリンが持っているゆらぎから受ける力が重要であると考えた.そこで,アクアポリンの穴を構成しているアミノ酸基の距離の時系列からアクアポリンの穴の内部に存在するゆらぎを解析した.具体的には,得られた時系列をフーリエ変換する方法と時系列を傾きの分散から求める方法(Detrended Fluctuation Analysis(DFA))を用いる.いくつかのタンパク質では,残基のゆらぎが1/fゆらぎになっていることが知られているので,アクアポリン内の残基のゆらぎが1/fスペクトルになっているかについて明らかにした.また,アクアポリン内の残基のゆらぎが,そこを透過する水分子に与える影響を調べるために,水分子が穴の中の特定の場所を透過する時間間隔の分布を調べた.これらのことを理論的に明らかにするために,一次元のポテンシャルモデルとLangevin方程式を用いてシミュレーションを行い,ポテンシャルの高さが1/fでゆらぐ際に,ある分子がポテンシャルの井戸を出るまでの時間の分布を調べ,アクアポリンのシミュレーションの結果と整合性があるのかどうかを検証した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
計画していたアクアポリン/細胞膜/水分子の大規模系の計算を行うことができ,その解析から新しい現象を見いだすことに成功した.
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今後の研究の推進方策 |
アクアポリンに関する知見が得られてきたので,引き続き解析を行う.また,親水基を付加したカーボンナノチューブのモデルを作成して,アクアポリンの系で得られた知見を元に淡水化に関するシミュレーションを行う.
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次年度の研究費の使用計画 |
消耗品を購入する予定にしていたが,既存のもので計画通り進めることができたこと,新しいモデルを購入するために製品が出るのを待っていたが年度内に手に入らなかったことが理由である.ただし,計画は順調に進んでいる. 次年度に今年度購入する予定であったものを購入し,研究を加速させる.
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