研究課題/領域番号 |
25630079
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研究機関 | 慶應義塾大学 |
研究代表者 |
杉浦 壽彦 慶應義塾大学, 理工学部, 教授 (70265932)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | マイクロバブル / 非線形振動 / 分子動力学計算 |
研究実績の概要 |
ターゲティングマイクロバブルの力学的挙動の解明とその医療への応用を目的として,初年度に続き,2年度目も,主に理論と数値解析によるバブルの非線形挙動の解明を進めて,以下の研究成果を得た. 1.非球形振動 (1)高分子膜の影響:軸対称気液二相流モデルに基づく数値流体力学シミュレーション(CIP法およびC-CUP法)により, 高分子膜があるとバブルの非球形振動が起こりやすいことを確認した.(2)壁面近傍での挙動:同じ手法で壁面近傍バブルの挙動を解析し,マイクロジェットの発生の仕方,周囲の圧力や流れの急激な変化を明らかにした.(3)壁との結合の影響:境界要素法によるシミュレーションで形状変化を考慮できるように改良し,壁面付近での音響キャビテーションや壁面に付着したバブルの振動解析に成功した.後者では,壁との結合に起因したバブルの固有振動数の変化が再現された. 2.分数調波共振への壁面と膜の影響:調和バランス法による非線形解析と数値計算を行って,壁からの反射波により分数調波が発生する超音波の周波数帯域と加振振幅の閾値が下がること,また膜の座屈による表面張力の急激な変化により加振振幅の閾値が下がることを明らかにした. 3.複数バブルの相互作用 (1)並進運動:超音波照射下で相互作用する2個のバブルの並進運動のパターンと,バブルの大きさ,バブル間距離,音圧,加振振動数などの条件との関係を数値計算および非線形解析により調べ,超音波と2個のバブルの振動の位相差によってパターンが決まることを明らかにした. (2)モードの局在化:初年度からの解析をさらに進展させ,非線形相互作用に起因する複数バブルの振動モードの分岐とそれに起因するモードの局在化をより詳細に予測し,数値シミュレーションによってその予測の妥当性を確認した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
実験に関しては,初年度より高速度カメラのデモ実験による検討を延長して先送りし理論検討と数値計算による現象解明を優先してきたが,2年度目も実験上必要な仕様に対して予算が見合わず,当初の実験計画内容の見直しを検討中である.実験延期の代わりに,壁近傍でのバブルの挙動や壁との結合による力学特性の変化等について数値解析による解明を前倒しして進めてはいるものの,実験延期のことを考慮して全体的には「やや遅れ」と評価した.
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今後の研究の推進方策 |
実験面では,全体計画の見直しを図り,真空ポンプによって観察する容器内の圧力を減じる工夫をすることに加え,スケールアップしたバブルでの計測を進める.特に,超音波と干渉する気泡群の非線形局在化現象に関する実験的検討を目指す. 一方,理論面では,壁近傍でのバブル変形時の流れや圧力の数値解析,壁との結合のモデリングと結合時の力学的特性の解析・数値解析を中心に,非線形挙動の把握を進める予定である.
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次年度使用額が生じた理由 |
実験計画遂行の遅れに伴い,当該年度に予定していた実験を次年度に回し,次年度予定していた理論検討および数値解析を当該年度に先に進めたため.
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次年度使用額の使用計画 |
次年度に先送りすることになったものも含めた実験および研究成果の学会発表に主に使用する.
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