研究課題/領域番号 |
25630080
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研究種目 |
挑戦的萌芽研究
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研究機関 | 豊田工業大学 |
研究代表者 |
成清 辰生 豊田工業大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (70231496)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 非線形制御理論 |
研究概要 |
本研究は,学習理論と制御理論の統合による新たな非線形学習制御理論を構築し,機械システムおよび人間機械融合システムの制御系開発に資することを目的とする.機械システムの多くは多項式・有理式モデルとなることから,このモデルに対して,Lyapunov関数を用いた安定領域DOA(Domain of Attraction)の推定とDOA内での安定化制御則の導出を行う.さらに,シームレスにDOA内の制御則に接続する学習制御系を設計し,大域的な安定性を保証するモデルフリーの非線形学習制御理論を開発する.まず,25年度は局所領域の多項式モデルを用いて安定化制御則設計とDOA推定を行い,多項式モデルに対して設計されたLyapunov関数を用いた強化学習によるシームレスに接続する制御則を構成した.これにより,完全に未知なシステムに対しても安定性を保証し,制御性能を考慮したモデルフリーの制御系設計を可能とする設計理論を構築することができた.次に,非多項式ディスクリプタ表現された自律システムの安定領域(Domain of Attraction: DOA)を探索する制御アルゴリズムを理論的に拡張し,入出力を考慮した非自律システムを定義した.この非多項式ディスクリプタ表現された非自律システムはほとんどのメカニカルシステムを表現する極めて広い範囲のシステムを含む表現となっている.このシステムに対して入力制約のある制御系設計理論を構築した.フィードバック制御のための多項式状態フィードバックゲインと安定領域DOAをPSO(Particle Swarm Optimization)アプローチを用いて求める方法を開発し,数値シミュレーションによってその有効性を確認した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
25年度は局所領域の多項式モデルを用いて安定化制御則設計とDOA推定を行い,多項式モデルに対して設計されたLyapunov関数を用いた強化学習によるシームレスに接続する制御則を構成した.これにより,完全に未知なシステムに対しても安定性を保証し,制御性能を考慮したモデルフリーの制御系設計を可能とする設計理論を構築することができた.一方,入力制約のある非線形ディスクリプタシステムの制御系の一般的な設計法は存在しない.システムの構造に依存する非線形状態フィードバック制御が見出されることもあるが,これは極めてまれであり,その制御則はシステムの特徴に依存しているため,他の非線形ディスクリプタシステムに適用することはできない.このような問題に対して,本研究では,多項式状態フィードバック制御による一般的な制御系設計法を提案できた.同時に安定領域を推定することもできるため,実用的な制御系設計法であるといえる.最終的な目標は未知システムに対する有理式モデル同定と制御系設計であるが,制御系設計についてはほぼ最終目標を達成している.
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今後の研究の推進方策 |
ディスクリプタシステムの安定化に基づく制御と強化学習の統合化を進めるとともに,装着型パワーアシストロボットと4脚ロボットを用いた実験検証を行う.まず,研究室で所有している外骨格型パワーアシストロボットを用いて実験を行う.義足を装着する際に用いるソケットと同様の方法を用いて,胴体,脚部および腕部をロボットと滑らかに密着させる.この接触部位に筋電センサと圧力センサを貼り付け,筋電位および筋変位を計測する.さらに,各関節角度センサから得られる信号を加えたベクトル値を用いた教師信号を作成する.これらの教師信号を用いて,SVMによる分離超平面の設計を行い,局所的有理式モデルを同定する.同定手法の検証は,具体的な支援動作実験の官能評価を用いて行う. 次に,研究室で開発した4脚ロボットの制御系設計を行う.4脚ロボットは不安定システムであるため,GMDHの適用には局所的フィードバックによる安定化の下で,閉ループ同定を行う.閉ループ同定では,フィードバックの影響により,外乱に対する動特性が消去・拡大される場合があるため,その動特性の同定については考慮すべき問題がある.そこで,本研究では,線形システムの同定で用いられている「直接法」を拡張・適用し,フィードバック部分を消去する手法でGMDHを適用する.これらのシステムに対して,装着型パワーアシストロボットを用いてモデルフリーの非線形学習制御系設計理論の構築のための実証実験を行う.静止状態および安定歩行の各歩容における平衡点近傍の局所領域で有理式システムを同定し,制御系設計を行う.この平衡点を各歩容に応じて移動させることによって,各歩容の安定化を達成する.さらに,動的歩行・走行の実現を目指し,振動子モデルにより生成されるダイナミックスへの追従制御系を構成する.
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次年度の研究費の使用計画 |
25年度は局所領域の多項式モデルを用いて安定化制御則設計とDOA推定を行い,多項式モデルに対して設計されたLyapunov関数を用いた強化学習によるシームレスに接続する制御則を構成した.これにより,完全に未知なシステムに対しても安定性を保証し,制御性能を考慮したモデルフリーの制御系設計を可能とする設計理論を構築することができた.このように理論構築とシミュレーションによって十分な研究成果を得ることが出来たため,実験を行う必要がなく,物品の購入が予定より大幅に減ったことから次年度に繰り越す金額が生じた. 26年度以降は,パワーアシストロボットと4脚ロボットの制御実験を行い,理論の有効性を実証する研究を行う予定である.このため,実験機器など物品購入が増え,予算の消費が大幅に増えることになる.特に,パワーアシストロボットと4脚ロボットの制御用デジタル信号処理システムを構成する.システムの構成は,DSPボード,ADボード,DAボード,カウンターボード,I/O搭載用ベースボード,DSPバスケーブルおよびMatlab対応ソフトからなる.実験検証に用いる制御用デジタル信号処理システム(DSPボード,ADボード,DAボード,カウンターボード,I/O搭載用ベースボード,DSPバスケーブルおよびMatlab対応ソフト)の構築も行う.また,実験環境整備に必要な機械および電子部品費なども購入する.
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