本研究は,学習理論と制御理論の統合による新たな非線形学習制御理論を構築し,機械システムおよび人間機械融合システムの制御系開発に資することを目的として,局所的な有理式モデルをディスクリプタ形式で表し,Lyapunov関数を用いた安定領域の推定と安定領域内での安定化制御則の導出を行うものである.さらに,シームレスにDOA内の制御則に接続する学習制御系を設計し,大域的な安定性を保証するモデルフリーの非線形学習制御理論を開発する.初年度は,非線形ディスクリプタシステムに対して入力制約のある制御系設計理論を検討した.まず,局所領域の多項式モデルを用いて安定化制御則設計と安定領域の推定を行い,多項式モデルに対して設計されたLyapunov関数を用いた強化学習によるシームレスに接続する制御則を構成した.これにより,完全に未知なシステムに対しても安定性を保証し,制御性能を考慮したモデルフリーの制御系設計を可能とする設計理論を構築することができた.26年度は,非多項式ディスクリプタ表現された自律システムの安定領域を探索する制御アルゴリズムを理論的に拡張し,入出力を考慮した非自律システムを定義した.27年度は,この制御手法をロボットカーの軌道追従制御に応用した.ロボットカーは市販の10分の1モデルを用いて,その記号追従制御系を非多項式ディスクリプタ表現された非自律システムとして設計した.フィードバック制御のための多項式状態フィードバックゲインと安定領域はPAPSO(Parallel Asynchronous Particle Swarm Optimization)アプローチを用いて求めた.モーションキャプチャシステムによる位置情報を用いて,ロボットカーの軌道追従制御実験を行い,その有効性を確認した.
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