表面ナノ構造を利用した光波制御手法は,極めて高いエネルギー密度の生成に有用であり,超高感度センシングや高い集積性の実現が期待されている.これら素子は一般に受動的でありその可変化は高機能システムの構築に必須の課題である.しかしながら,光学材料特性による制限から大きな特性チューニングは容易ではない.一方で,プラズマは外部からの電圧印加によって,通常気体から電離気体へと劇的な特性変化が起こる.本研究では,プラズマを固体,液体,気体に続く第4の光学材料として捉え,微小空間での光学特性評価と集積光学素子への搭載に取り組んだ.前年度までに半導体プロセスを駆使して,Si基板内に逆ピラミッド構造を作製し,絶縁層の上部に形成した金属薄膜電極と基板間への直流電圧印加によって,微小放電を行った.本年度は,表面ナノ構造を利用したプラズモン共鳴素子の作製とプラズマ雰囲気下での光学特性変化を検討した.電子線リソグラフィと真空成膜技術によって,金属周期構造を作製した.周期を300~500 nmまで変化させた.通常気体では,波長633 nmの励起光では入射角度が10度付近でプラズモン波が生じるが,放電によって電離状態にすると,僅かではあるがピーク角度がシフトする.今後,この共鳴状態の変化に与える電離と熱の影響を詳細に検討する必要がある.また,放電時の高電圧印加によって,薄膜電極は容易に損傷を受けるため,新規のマイクロ電極構造開発を検討している.
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