活動中の火山において,火山の火口近辺に堆積した火山灰の厚さ分布や組成を観察するため,無人ヘリコプタ投下型の小型探査ロボットによる観察システムが有力視されている.そこで,本研究では,斜面を転がる現象を制御することで,不整地斜面を効率的かつ高速に下ることが可能な,小型移動ロボットの研究開発を進めている.平成27年度には,平成26年度までに開発したプロトタイプロボットによるフィールド実験結果を元に,この試験で明らかとなった問題点を克服するための新たな小型移動ロボットに関する設計と製作を進めた. フィールド試験で問題となったのは,走行時の安定性と停止方法である.平成26年までに試作したプロトタイプロボットは,左右車輪の径を調節することで,進行方向の操舵を可能としていたが,基本的には,速度調整ならびに,停止が困難であると共に,石などに乗り上げた際の走行が不安定となっていた.そこで,本年度は,基本コンセプトを生かしつつ,新たに4輪型の移動ロボットを設計することとした.このロボットは,提案書通り,基本的には斜面を下る際の位置エネルギーを利用する点を生かして,斜面を走行する.ただし,本体で転がるのでは無く,車輪に減速比の低いモータを取り付けて走行を行う.操舵ならびに停止については,車輪の径を変更するのではなく,左右輪のブレーキ(回生ブレーキ)量を調節して行う.この手法を用いることにより,走行時の安定性と停止方法の問題について,解決することが期待できると共に,電力を回収することで,総合的なエネルギー収支も改善することが期待できる.本年度は,この機構の設計・製作を行うと共に,研究室で有する4輪型ロボットに適応する目処を立てることができた.助成期間後も継続して研究開発を行い,不整地斜面を効率的かつ高速に下ることを可能とする移動ロボットの試験を実施する予定である.
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