植物が「根」を成長させるプロセスを参考に、外部と無摺動で伸長する線形柔軟構造の移動体「先端成長型アクチュエータ」の創製に挑戦した。すなわち、根は全体が成長するのでなく、先端付近の分裂組織(成長点)のみが成長して地中深奥部まで達する。同様の動作をアクチュエータとして実用的な速度と力で実現できれば、大腸内壁と無摺動で移動可能な体に優しい医療機器の創製につながる。 以上の観点から、本研究では、大腸内視鏡への応用を視野に入れ、小口径の構造で方向操舵機能を有し、外壁と無擦動で搬送可能なアクチュエータを構築し、医療機器のブレークスルーを図ることとした。 具体的には、2本の柔軟偏平チューブの対向構造による推進機構の開発を試みた。断面の潰れた偏平チューブの折り曲げ点において、流体経路を遮断できるという全く新しい流体駆動現象を用いた。複数の偏平チューブを円筒形に対向させて配置し、外周部に位置する 偏平チューブの末端から流体圧で加圧すると、下流側チューブが繰り出されることを確認した。当該原理をもとに、外径20mm、長さ1500mmの試作機を作製し、動作を確認した。S字結腸においてやや進行しづらい現象はみられたものの、概ね大腸内部を擦動せずに移動できる見込みがたった。
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