本研究では、超微弱レーザー光による金属化マイクロタービンの超高効率な駆動現象のメカニズムを実験と解析によって解明することを目指しました。我々は、この超高効率な光駆動の原因として、金属化マイクロタービンに照射されたレーザー光が、金属薄膜に吸収され、その光吸収によって生じる発熱が熱対流を誘起し、マイクロタービンの回転を促進していると予想しました。そこで、タービンの光吸収による発熱現象を実際に観察するために、共焦点蛍光顕微鏡システムを用いて、蛍光色素の発光強度の温度依存性を利用してレーザー照射時の発熱現象の観察を試みました。その結果、数mWのレーザー照射によって20~30℃の温度上昇があることがわかりました。 また、レーザー光を照射するだけで自律的に回転するコマ型マイクロタービンを新たに設計し、実際に2光子マイクロ光造形法によってタービンを造形し、無電解銅めっきを施して、新型の金属化マイクロタービンを試作しました。そして、このコマ型タービンのブレードに、約4mWの連続発振レーザー光(波長752nm)を回転走査させながら、連続的に照射させることで、コマ型タービンを安定に回転させることが可能であることを確認しました。 さらに、コマ型タービンの支持部と回転部のクリアランスや造形条件を最適化することで、レーザー光を走査させることなく、2mW以下の微弱なレーザー光を集光するだけで約580rpmで高速回転させることにも成功しました。今後、この高効率なマイクロタービンは、光駆動マイクロミキサーやバイオ研究ツールへの応用が期待できます。
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