研究課題/領域番号 |
25630091
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研究種目 |
挑戦的萌芽研究
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研究機関 | 芝浦工業大学 |
研究代表者 |
山西 陽子 芝浦工業大学, 工学部, 准教授 (50384029)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 電界誘起気泡 / パターニング / 3次元加工 |
研究概要 |
本研究は同心軸多層管にガラス電極構造を作成し,様々な溶液を常に供給できる機構を作りこみ,薬剤や遺伝子が含まれる気液界面を作成し放電により大気圧液中下の対象物の狙った場所にパターニング・導入することを目標に研究を行っている.初年度はガラス電極先端に複数の電極をパターニングして誘電泳動により電極先端の電場勾配を制御することにより,発生する気泡の軌道制御を行い高精度位置決めを有するパターニング技術を完成させ,ライフルのように狙った位置にパターニングできる新しい大気圧液中下での革新的加工・パターニング技術を実現へ向けて研究を行った.研究実績の概要としてはこれまでにない指向性を持つ細胞や生体試料等の微細加工や遺伝子導入を達成するために,マイクロ・ナノスケール気泡列発生現象を発生させるマイクロガラス電極の設計・製作を行い,多重電極構造によりガラス電極に溶液を常に供給できる機構を作りこむことに成功した.この技術を用いることにより,従来困難であった様々な固さを有する幅広い生体試料への試薬導入が十分可能となり試薬や遺伝子を狙った箇所に局所的かつ低侵襲に細胞へ導入する技術が完成した.ガラス電極先端付近に微細な電極を複数パターニングし位相をずらした正弦波電圧を印加することにより電場を制御し単一分散気泡列の軌跡を数μm~数十μm程度の位置精度で制御できるように開発した.当初はパルス放電により発生する数μmのサイズの指向性単分散気泡列が誘電泳動により、対象物表面に数μmオーダでパターニングすることを目標に研究を行っていたが,数m/sものハイスピードで液中に放出された気泡の位置制御は当初は困難であったが,気泡発生と同じ大きな電場を3次元プローブによって発生させた結果,単一分散気泡列の軌跡を数十μm程度の位置精度で制御可能であることを確認した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
目的である指向性を持つ細胞や生体試料等の微細加工や遺伝子導入を達成するために,マイクロ・ナノスケール気泡列発生現象を発生させるマイクロガラス電極の設計・製作を行い,多重電極構造によりガラス電極に溶液を常に供給できる機構を作りこむことに成功した.この技術を用いることにより,従来困難であった様々な固さを有する幅広い生体試料への試薬導入が十分可能となり試薬や遺伝子を狙った箇所に局所的かつ低侵襲に細胞へ導入する技術が完成した.ガラス電極先端付近に微細な電極を複数パターニングし位相をずらした正弦波電圧を印加することにより電場を制御し単一分散気泡列の軌跡を数μm~数十μm程度の位置精度で制御できるように開発した.当初はパルス放電により発生する数μmのサイズの指向性単分散気泡列が誘電泳動によりその軌跡の制御を行い、対象物表面に数μmオーダでパターニングすることを目標に研究を行っていたが,数m/sものハイスピードで液中に放出された電界誘起気泡の位置をコントロールするには十分大きな印加電圧が必要であり,基板にパターニングする2次元形状の薄い電極だけでは気泡の位置を制御することが予想以上に困難であることがわかった。しかしながら気泡発生と同じ大きな電場を3次元プローブによって発生させた結果,単一分散気泡列の軌跡を数十μm程度の位置精度で制御可能であることを確認した.よって概ね順調に研究は進展しているといえる.今回は一つの誘電泳動という手法で位置制御のアプローチを行ったが,高速発射気泡に適合した新しい手法による気泡軌跡の位置制御技術についても検討を行っている.
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今後の研究の推進方策 |
平成26年度は,さらに能動的に個々の気泡を圧壊させ低侵襲加工に繋げるために,MEMS 技術により振動子をマイクロ電極に組み込み,超音波による粗密波を発生させることで,一列の気泡列のうち狙った個々の気泡のみを圧壊させる高精度パターニングを目標とする.一列の内の1個のみの決まった場所の気泡を圧壊させることで,位置精度をさらに向上させた加工やパターニング技術に貢献するものである.一方で簡易実験の結果,気泡が圧潰する共振周波数がMHz帯のピエゾを使用する必要があり,それは大型な振動子となり当初の研究計画のコンセプトととは異なるものになることが予想できたため,異なるアプローチによる低侵襲加工研究も同時に遂行している.例えば精密ガラス加工によるプローブ構造改良や印加電気パルスの工夫によるアプローチについても検討を行っている. また研究目的のもう一つのトピックに電極の出力を上げることで,ラジカル・プラズマ状態の気泡を発生させ,それを用いることで局所的な悪性細胞の殺菌や死滅に利用したり,有機物の親水化パターニングなどに応用する基盤技術を創出する研究課題を目指すものがあり,こちらについてはプラズマとキャビテーションを合体させる現象を実現させる電極配置とプローブ構造を研究中である.気液界面にpH や導電率等を分光光度計や蛍光試薬等によって計測し,気泡内のラジカル・プラズマ状態の計測を行ない,どのような状態の気泡がインジェクションされるのかの解析を行う予定である.
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次年度の研究費の使用計画 |
次年度使用額が生じた理由は,予定した物品の納品時期が遅れたために発生したためである. 次年度使用額が生じた分については,当初の予定通りアフリカツメガエルの卵母細胞費用として処理する予定である.
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