研究課題/領域番号 |
25630095
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研究種目 |
挑戦的萌芽研究
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研究機関 | 香川大学 |
研究代表者 |
寺尾 京平 香川大学, 工学部, 准教授 (80467448)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 分子操作 / DNAナノテクノロジー / 光ピンセット |
研究概要 |
本研究は、DNA分子で構成されるナノデバイスと、MEMSや集積回路といったマイクロデバイスの間を繋ぐ配線技術に関する研究である。研究代表者がこれまでに実現した巨大なDNA分子の非侵襲操作技術をベースに、巨大DNAをマイクロ電極間を繋ぐ分子配線素材として用いる。研究期間内に本提案原理を実証することを目標に、本年度は以下の点に取り組んだ。本年度の研究実績を基に次年度はDNA分子の操作と配線の実証に取り組む計画である。 ・ナノ構造体の製作と評価: ナノ構造体の作製効率を向上することと、さらに微細な構造の作製を実現することを目標に、これまで行っていた基板からの破壊的な回収方法からPVAを用いたリフトオフ法による回収方法を用いることで、収率を6倍程度に向上した。また、40 nm程度のパターン精度でナノ構造体を製作することに成功した。 ・レーザー光学系の構築と拡張: 本年度は、年度後半に実験設備の移設により新たに光学系を構築し直す必要が生じたため、光学部品の選定と購入を進め、次年度以降の2軸レーザー光学系への拡張に備えた。 ・金マイクロ電極基板の作製: 金マイクロ電極基板の作製に向けて、微小領域に生体分子固定化を行うためのマイクロ流路デバイスを開発した。IgG抗体をサンプルとして固定化し、表面プラズモン共鳴装置を用いて評価を行った。その結果、従来用いていたバッチ方式の固定化法と比較して安定に固定化できることを示した。 ・光操作特性評価: 様々な形状で作製したナノ構造体に対して、複数のレーザー出力条件でトラップを行い、ナノ構造体の形状とトラップ力の関係に関して計測を行った。その結果、小さいものではトラップ力が低下するものの、作製したパターンでは10 pN以上の力が発生できることを確認した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究は、ナノデバイスと、MEMSや集積回路といったマイクロデバイスの間をDNA分子を配線素材として繋ぐ技術の開発に関するものである。本提案原理である、マイクロ電極間のDNA分子の配線を実証することを目標に、本年度までに取り組んだ項目についてそれぞれの達成状況を以下に記す。本年度の研究実績を基に次年度はDNA分子の操作と配線の実証に取り組む計画である。下記のように、レーザー光学系の再セットアップの必要性が年度後半に生じたものの、次年度の研究推進に向けて十分な準備が進められている。ナノ構造体や電極デバイスの開発の点については、想定程度あるいはそれよりも高い収率やパターン精度、固定化量が得られたことから、本研究は順調に進行している。 ・ナノ構造体の製作と評価:当初ナノ構造体の作製効率は10%程度に留まっていたが、リフトオフ法を用いることで60%まで向上した。これにより単位体積当たりより多くのナノ構造体が得られることになり、今後の新規ナノ構造体の開発が容易になる。また、40 nm程度のパターン精度でナノ構造体を製作することに成功した。 ・レーザー光学系の構築と拡張:本年度は、年度後半に実験設備の移設により新たに光学系を構築し直す必要が生じたため、光学部品の選定と購入を進め、次年度以降の2軸レーザー光学系への拡張に備えた。 ・金マイクロ電極基板の作製:金マイクロ電極基板の作製に向けて、微小領域に生体分子固定化を行うためのマイクロ流路デバイスを開発した。IgG抗体をサンプルとして固定化し、表面プラズモン共鳴装置を用いて評価を行った。その結果、従来用いていたバッチ方式の固定化法と比較して安定に固定化できることを示した。 ・光操作特性評価:流体力学的な効力の見積もりにより、ナノ構造体のトラップ力を算出し、生体分子操作に必要と考えられる10 pN以上の力が発生できることを確認した。
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今後の研究の推進方策 |
今年度は、ナノ構造体の作製、レーザー光学系の構築、金マイクロ電極基板の作製、光操作特性の評価に取り組み、操作に必要な開発環境を整備した。次年度は本年度に移設のため完了できなかったレーザー光学系の再構築を早急に行うと共に、研究期間内に本提案原理を実証することを目標に以下の研究開発項目に取り組む計画である。 ・電極表面の化学修飾:電極と接触しただけではDNA分子を接合できない。そこで、正電荷を持つアミノ基をマイクロ電極に化学修飾することで、負電荷を持つDNAを静電的に固定する。今年度に開発したマイクロ流路を用いた再現性の高い分子固定化修飾法について試験し、アミノ基をもつ分子をポリリジン分子等をカップリング反応によりマイクロ電極基板上の自己組織化膜固定する。 ・酵母DNA配線操作:提案手法の原理実証のため、作製した金ピラー電極基板上でDNAの分子操作を行う。DNAを蛍光色素で可視化し、蛍光顕微鏡観察下で2つのナノ構造体を利用して操作する。従来法では扱うことの困難な100 μm離れた電極間の液中配線をモデルとして実証する。 ・電気特性変化の計測:巨大DNAが配線として利用可能であることを示すため、配線したDNAに化学的な処理により金属イオンを結合させ、それを基に還元作用を利用することで金属原子を成長させ、DNA分子をナノ金属線にすることを試みる。
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