本研究では,生物の創傷治癒やホメオスタシス,細胞へのエネルギー供給などに大きく関わる血液循環器を模した人工血液循環器系システムを構築し,機械システムの自己修復機能,自己メンテナンス機能およびエネルギー供給機能を循環器系システムにより実現することを目的としている. 自己修復機能の研究に関しては,修復する導線であるMagnetic Powdery Wire (MPW)の開発,修復する接触式変位センサであるMagnetic Powdery Sensor (MPS)の開発を行った.金属粉(FeやNiなど)を磁場に整列させることにより,導線やセンサ部を構築する.導線やセンサ部の破壊があった際に,循環器が材料である金属粉を運搬することで破損箇所に供給されることで,導線やセンサが再構築され機能が回復した.また,循環器系には組み込んではいないが,溶液中で摺動部の摩耗や腱駆動のワイヤを修復する技術の開発も行った.自己メンテナンス機能の研究に関しては,オイルや吸着剤などを内包したカプセルを循環器中で循環させることにより,潤滑の必要な箇所の潤滑や循環器中の不純物の除去を行うシステムの構築を行った.カプセル被膜により内包物が液体であっても循環器系の溶液と混合しない状態で運搬が可能であり,カプセル系サイズの差を利用することで容易に分離することができた.エネルギー供給機能に関しては,微生物や燃料電池を用いて有機物からエネルギーを取り出す研究を行ったが,少量の電気エネルギーに変換できただけであった.他にも,血管のように管の直径を変化させることで流速をコントロールする技術の開発や,刺激応答性カプセルを利用した修復技術の研究なども行った. 今後は,これまでの要素技術研究を統合することで,研究の目標に設定している自立システムの構築を目指す.
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