本研究の目的は,テンセグリティロボットの転がり移動におけるダイナミクスを,離散的な状態遷移と連続的な微分方程式から構成されるシステムとして表現することである.まず,テンセグリティロボットの幾何学的表現から,転がりを表す離散的な状態遷移を導いた.テンセグリティロボットの閉包は,凸多面体となる.たとえば,6ストラットテンセグリティロボットの閉包は,8個の正三角形と12個の二等辺三角形から成る二十面体で表される.テンセグリティロボットの静的な安定状態は,地面と接触する多角形に対応し,転がりは,隣接する多角形の間の遷移で表される.結果として,6ストラットテンセグリティロボットの転がりにおける接触状態の遷移は,正三角形から二等辺三角形,二等辺三角形から正三角形,二等辺三角形から二等辺三角形に分類できることがわかった. 次に,テンセグリティロボットの運動方程式を導き,テンセグリティロボットの転がりをシミュレーションした.テンセグリティロボットの弾性要素とアクチュエータに発生する力を定式化するとともに,テンセグリティロボットを構成する複数のストラットの運動方程式とストラットと地面との接触に起因する運動制約を統合することで,テンセグリティロボットの運動方程式を得た.6ストラットテンセグリティロボットと星形テンセグリティロボットのシミュレーションを行い,正三角形から二等辺三角形,二等辺三角形から正三角形への遷移が可能であることを示した.6ストラットテンセグリティロボットのシミュレーション結果と実機実験の結果を比較し,双方が一致することを示した.さらに,ストラットを駆動するテンセグリティロボットの転がり移動を,実験的に評価した.その結果,ストラット駆動には,すべての遷移を実現することができる,遷移を実現するために必要なアクチュエータの個数が少ないという長所があることがわかった.
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