研究課題/領域番号 |
25630101
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
五十嵐 一 北海道大学, 情報科学研究科, 教授 (90212737)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | モデル縮約法 / モデルオーダリダクション / 有限要素法 / 等価回路 / 遺伝的アルゴリズム / 設計最適化 |
研究実績の概要 |
近年,電気機器の最適化が急速に設計現場に普及しつつある.これは最適設計により,設計時間を短縮しつつ機器の高性能化を行うことができるためである.しかしながら,特に3次元機器モデルの有限要素法解析は計算時間が非常に長い.このため有限要素解析を何度も繰り返す最適化計算には極めて長い計算時間が必要であった.このことから,3次元最適化の設計への応用は現実的に困難であった.本研究では計算時間を大幅な短縮して3次元モデルの最適設計を可能にするため,数百万程度の未知数を持つ有限要素方程式を,モデル縮約法を用いて数10の未知数の小さな方程式に縮約する方法を開発する. H26年度は,有限要素モデルにモデル縮約法を適用することにより,それと等価な入出力を持つ回路モデルに置換する方法を開発した.等価回路を生成するためのモデル縮約法として,有限要素方程式から直接的に有理関数を導く方法と,有限要素解析を数回繰り返して得られる電磁界分布から場を表す基底ベクトルを構成し,それより有理関数を導く方法の2種類を開発した.有理関数が構成されれば,それらからはしご型回路を導くことができる.これらの方法を用いて,インダクタの有限要素モデルから等価回路を生成したところ,期待される入出力関係を再現できることがわかった.これらの研究成果はH27年度にカナダで開催される国際会議COMPUMAGにて発表する予定である. またH26年度には,モータや振動発電機など可動部がある有限要素モデルを短時間で解析するためのブロックモデル縮約法を開発した.本法では運動により電磁界が大きく変動するため,機器を複数の部分領域に分割し,それら部分領域ごとに場を表す基底を生成する.この方法により,領域分割を行わない従来のモデル縮約法に比べて,計算時間を大幅に短縮でき,また解析精度も大幅に改善させることができた.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
電気機器の有限要素モデルの等価回路を,モデル縮約法により生成する方法を開発することができた.また等価回路を用いた特性解析を行ったところ,有限要素解析に比べて解析時間を1/100~1/1000程度に短縮できることがわかった.また従来は,実験結果や解析結果を基に,設計者が経験的に有効だと思われる等価回路を作成していたが,広い周波数帯域で特性を実験結果等にフィッティングさせることが困難であった.本研究にて開発した方法では,広い周波数帯域での誤差を最小化するため,従来の方法よりも広い周波数帯域で良好な精度を得ることができる.こららの成果は研究を実施する前には,想定していなかったものである.
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今後の研究の推進方策 |
われわれが開発したブロックモデル縮約法をモータ解析に適用する場合,磁気飽和の影響を強く受けて,解析誤差を一定以下にすることが難しいことがわかった.また,モデル縮約法により生成した等価回路についても,磁気飽和がある場合の解析精度は不明である.そこでH27年度には,非線形性がある場合の精度向上のための検討を行う予定である.
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次年度使用額が生じた理由 |
H26年度に電磁界解析用コンピュータを購入する予定であったが,H26年度はモデル縮約法を用いた有限要素モデルの等価回路生成法と,領域ごとに基底ベクトルを生成するブロックモデル縮約法の定式化を主に行ったため,購入は次年度とした.
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次年度使用額の使用計画 |
H27年度に電磁界解析用コンピュータを購入する.特に,ブロックモデル縮約法に向いた並列計算機を購入する予定である.
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