本研究では,振動発電スイッチを利用した波力発電システムの原理と実用性を試作開発により検証するのが目的である。 本年度においては、岸壁の跳ね返り波で発電するシステムを考案し、その動作を試作、造波試験により検証した。システムは2個の磁歪式発電デバイスと振動板で構成され、バイアス時において振動板は永久磁石により吸着している。これを壁面に設置し、振動板には跳ね返り波が作用、上昇することで振動板が脱着、デバイスに自由振動が励振されることで発電する。発電デバイスにおいては従来の直線型とU字型の2種類を比較し、U字型は直線型に比べ固定端損失が低下することで、出力が向上することがわかった。また造波装置にデバイスを設置し、波が作用することで定常的に発電が行えることを確認した。また水面とシステムの設置位置の相対距離と発電量の関係を調べ、デバイスを効果的に利用するための条件を把握した。またブイと発電スイッチを組み合わせたシステムにおいて、海底への固定が不要な構造を考案、試作を行った。これに関して今後、造波試験にて動作検証する予定である。 一方、将来の波力発電への適用を目指し、発電デバイスの構造と大型化について検証した。2個の発電部を有するU字構造を採用することで出力を向上、固定端損失が低減、振動が持続することで高効率化をはかれることを実証した。実際、3mm×15mm×100mmの磁歪板を利用したデバイスの試作によりワットオーダの出力、共振周波数7Hz、エネルギー変換効率39%を確認した。また結線方法による出力や振動減衰の理論を導出し、この妥当性を実験により確認した。
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