カーボンナノコイル(CNC)とは,ファイバ直径やコイル直径が数百 nm の微小なラセン形状物質である。CNC はそのラセン形状から電磁波吸収特性に優れることが示されているが,ナノメートルサイズのコイルばねとしてナノスプリングやナノインダクタに応用するという研究はその微小さ故にあまり進んでいない。本研究では CNC による電磁誘導現象の観測というこれまでに例のない研究に挑戦することとした。本年度は,単一の CNC を電極間に配置してその直流電気特性を測定する,という研究実施計画において下記の研究成果を得た。この成果は,CNC の電磁誘導特性の測定,また CNC の電子材料としての応用にとって重要な知見である。 (1)集束イオンビーム装置内にて,酸化シリコン基板上に形成した2箇所の金薄膜上に CNC のそれぞれの端を載せて,プラチナを堆積してその端を固定することにより測定用 CNC 試料を作製した。CNC の端を固定する方法として他に2種類を試した結果,本手法で作製した試料は電気特性測定用探針を CNC に接触させず測定できるため測定誤差率が最も低いことがわかった。 (2)(1)で開発した手法を用いて,複数の CNC について電気特性を測定した。これらの CNC はファイバ直径やコイル直径がそれぞれ異なるため,電気抵抗率を用いて CNC の電気特性を評価した。結果として,CNC の電気抵抗率は高いグループと低いグループとに二分された。ラセン形状を持たないが CNC とほぼ同じファイバ直径を持つカーボンナノファイバについて同様に電気抵抗率を測定したところ,その値は CNC の二グループの値の中間に位置することがわかった。
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